◯先だって久しぶりに小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)の診断をする機会がありました。そのケースは初診の数か月前に食後1時間後に激しいじんましんが見られて救急病院を受診していました(詳細は不明)。初診の数週間前からは不定期にじんましんが見られていましたので、特発性のじんましんとして抗ヒスタミン内服薬で治療をしていました。初診から5か月経った頃、昼食にパスタを食べた後軽い運動をしたところ全身にじんましんが見られたので直接症状を診てもらいたいとのことで自転車を漕いで来院されました。診察時に血圧低下は無かったものの、皮膚症状は重症でした。典型的なWDEIAの臨床経過でしたので、RAST (小麦、グルテン、ω-5グリアジン)を検査して診断は確定しました。尚、今回は幸いにも重症の皮疹に対して抗ヒスタミン薬の内服のみで症状は軽快しましたが、基本的には、呼吸困難、血圧低下など、全身症状が見られる場合も含めて救急対応のできる医療機関を直ちに受診してください。
◯初診時の問診でWDEIAを疑って積極的に検査を行なっていれば早期に診断ができて、2回目の発症は予防できたものと思われます。食後に見られる重症じんましんでは詳細不明で状況確認ができていない場合でもWDEIAの検査を行なうべきだと痛切に感じました。
2025/1/5
〇アトピー患者さんの症状が悪化するケースが段々と増えてきています。季節の変化に伴う皮膚の乾燥、衣類の刺激、入浴時の習慣、ストレス、ハウスダストのアレルギーなど、様々な悪化因子はありますが、湿疹そのものが一番の悪化因子と言われています。湿疹があればかゆみでひっかくことでさらに皮疹は悪化しますので完全に症状を抑え込むことが必要です。症状の軽い患者さんの場合は皮膚症状に応じたリアクティブな治療で問題ありませんが、症状がひどくなりますと集中的に継続して治療する必要があります。症状の強いアトピー患者さんで定期的に通院していただいていながらあまり症状が改善していないケースの多くは治療(外用剤の強さ、使用量)が十分に足りていません。ここで問題となるのはまさに「クリニカルイナーシャ」です。高血圧や糖尿病などの治療でコントロールが不十分な際によく用いられる言葉で、「臨床的惰性」、「臨床的慣性」などと訳されます。アトピー治療においては症状に応じた外用剤の治療が行なわれない,あるいは十分に皮疹がコントロールされていないにもかかわらず治療が強化されない状態を指します。クリニカルイナーシャは医療費や副作用の懸念、時間的制約、薬が増えることへの抵抗感、医師患者間の意思疎通(コミュニケーション)の不足など、医療者側、患者側、医療制度上のさまざま要因によって起こりえます。難治性(ならびに重症)のアトピー性皮膚炎の治療においてもクリニカルイナーシャの克服は重要な課題です。他に主治医がいながら予約がとれない、待ち時間が長いからと不定期に当クリニックに来られる患者さん、仕事でなかなか受診できないということで長期間の受診間隔になっている患者さん、診察終了時間間際に駆け込みで受診される患者さんにおかれましては、先ずは時間的制約を取り除くことが第一歩と考えます。
(蛇足)周辺に混み合う皮膚科がいくつもあるためか、他医を受診していながら諸般の事情で不意に当クリニックに来られる患者さんが後を絶ちません。ほとんどの場合何事もなかったように受診されますが、問診票や過去のカルテの記載内容、お薬手帳の不提出ならびにその時の症状、雰囲気などでそれとなく分かります。皮疹の推移、治療経過、検査所見などを正しくお伝えいただかないときちんと治療できませんが、わざわざ当クリニックを受診していただいていますのでつなぎとして必要最低限の処方(もしくはこちらで行なった以前の処方)だけは機械的に行なうようにしています。中には長期間や大量の処方を希望されたり、処方の内容を指定されたりする患者さんがいらっしゃいますが、原則としてはご要望にはお応えしておりません。尚、(診断・治療方針を含めた)治療は主治医の皮膚科に一本化した方が宜しいので、こちらから詳しくチェックや説明をしたり、検査をしたりすることはありません。たまに勘違い、思い違いがありますので、(間を空けずに定期的に)当クリニックだけを受診しているにもかかわらずきちんと診てもらっていない(と感じる)場合は診察時にご遠慮なくお申し出ください。また、改めて説明を詳しく聞きたい場合、セカンドオピニオンを求めたい場合、こちらを主治医に変えたい場合にもお気軽にその旨をお伝えください。
2024/12/1
12月30日(月)~1月3日(金) 休診
年末年始休みのため上記の通り休診させていただきます。12月28日(土)、1月4日(土)は通常通り診療します。大変ご迷惑をおかけしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
2024/11/18
〇ここのところ汗もあまりかかず、乾燥も目立たない時候だったためか、アトピーの症状が一旦落ちついていた患者さんで治療を弱めたり、お休みしたりしていて、急激に悪化するケースがちらほら見られるようになってきました。一度悪くなりますと、症状を落ち着かせるのに以前よりも強力な治療をまとまった期間行なう必要がありますので、症状が落ち着いている間も症状にあわせた治療ならびにスキンケアを継続するように心がけてください。
〇つい先だって12歳以上のアトピーの患者さんで新しい外用剤(ブイタマーⓇクリーム)が使用できるようになりました。既存の外用剤とは異なる作用機序の非ステロイド剤ですが、比較的高価で、臨床的な効果もまだ十分に認知されていませんので、今後どのような展開になっていくのか注目されます。当クリニックでもいろいろな情報を踏まえて今後(現時点では時期未定)採用していく予定です。
2024/11/2
〇ついこの間まで異常に暑い日が続いていましたが、ここのところ朝夕は肌寒くなってきてようやく秋の気配が感じられるようになってきました。皮膚科的にはイベントがなければトラブルの比較的少ない過ごしやすい時期ですが、急激な寒暖差によって体調を崩すとウイルス感染症にかかりやすくなりますし、じんましんなども出やすくなります。汗による皮膚のトラブルから乾燥によるアトピー性皮膚炎、老人性の乾皮症などの悪化が危惧される季節に変わりつつあります。早めの治療、スキンケアを心がけて悪化しないようにしましょう。つい先だってNHKの『あしたが変わるトリセツショー』でスキンケアの特集をしていました。特にニキビ肌の人は大変役に立ちますので、是非NHKプラスで観てください。
〇手足口病が全国的に依然として大流行しているようですが、当クリニックでも散見されます。治療薬はありませんが、予防としては手洗いの励行が重要です。皮膚症状は激しい場合もありますが、全身状態が安定している場合は小児の登校、登園は可能です。すぐにお休みする必要はありませんので親御さんは落ち着いて対応してください。
2024/10/5
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