気まぐれ随想録

大量のステロイド外用を長期間続けても良くならないアトピー性皮膚炎患者さんは入院治療が必要です。

 アトピー性皮膚炎の治療は薬物療法、悪化因子の検索・除去、スキンケアの3本柱に則って治療を行なっていきます。ほとんどの場合これらの治療方針で症状の改善が望めますが、実際の診療の現場で治療に難渋するケースが主に二つあげられます。一人暮らしの方で背中に症状が目立ち、自分できちんと薬を塗れない(まわりの方に塗ってもらえない)場合と悪化因子が分かっていながらどうしても除去することができない場合です。前者の場合には少しでも回数を多く受診してもらってその際外用処置ができれば症状の改善が期待できますが、後者の場合にはなかなか良くなりません。具体的にはハウスダストの強いアレルギー(RAST 異常高値を含む)がありながらホコリにまみれる仕事を続けられている方などが相当します。このような方々はなかなか症状がよくならないにもかかわらず、たまにしか受診できませんので一回の診察で大量の強いステロイドを処方してしまうことになります。このような状況が長期にわたりますとステロイドの副作用が問題になってきます。
 このようなケースで一番良い対応は一度入院施設のある皮膚科でしっかり悪化因子を検索・除去して、薬を適切に塗って症状を改善させることです。入院することでいろいろ検査をしたうえで悪化因子をほとんど除去することができますし、背中の塗りにくい部分へのステロイド剤の外用や全身のスキンケアを十分に行なうことができますので、必ずいったん症状は治ります。退院してからは元の環境に戻って悪化因子にさらされますと症状は再び悪くなりますが、スキンケアを心がけながら早めにきちんとステロイド剤を外用しますと入院前の状態にすぐに戻ることはありませんし、入院前よりもずっと少ない量のステロイド外用剤で症状をコントロールすることができます。
 症状が良くならないまま延々と強いステロイド外用剤を大量に続けていきますと副作用がほとんどの場合見られるようになりますし、リバウンドのような急激な悪化が見られる機会も増えてきます。入院期間は数週間から一か月程度に及びますので、仕事や家庭の事情などでなかなか入院できないのはよくわかりますが、長期間強いステロイドを大量に塗り続けながら症状が一向に良くならない方につきましては何とか工面をつけてお早めに入院治療をされることをお勧めします。尚、当クリニックにつきましては入院施設がありませんので基幹病院の皮膚科に紹介させていただいております。


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