先だって日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会に出席しましたが、大変興味深い内容に満ちあふれ大いに勉強になりました。その中でトピックとして最も多く話題となっていたのはTARCでした。TARCはアトピー(性皮膚炎、以下略)の炎症の病勢をみる血液検査で、2008年からすでに保険適応となっていましたが、個人的にはアトピーの診断の手助けにたまに利用する程度でした。この2年間でアトピーでのTARCのデータが数多く集まり検討された結果、アトピー診療において治療効果を判定する際に最も信頼のおける指標となることがわかってきました。
一方、アトピーの治療では症状が現れたら外用するという対症療法が中心でしたが、最近は症状の有無にかかわらず週に2~3回外用するプロアクティブ療法が注目されるようになりました。これは外用を止めた途端にアトピーの症状が悪くなる例が多く、それを改善するべく考えられたものです。先の学会では、症状が良くなって治療を止めると直ぐに再発する例の多くがTARC高値で、TARCの値が正常の場合には治療中止直後の再発がほとんどないことが報告されていました。プロアクティブ療法が有効な例の多くは一見アトピーが良くなっているようでもよく見ると症状が残っており、TARCの値も正常になっていないとのことでした。これらよりTARCの値を正常に保つ(していく)ということがアトピーをしっかり治す(コントロールする)ことにつながるということが強調されていました。
肝臓病では、体がだるいなどの臨床症状に始まり、エコーやCT、MRIなどで画像として肝臓の状態を見るほか、GOTやGPTなどの血液検査で肝機能の具合を見て行きます。アトピーに置き換えれば、かゆいという症状に始まり、直接皮膚を見たり、触ったりしながら皮膚炎の状態を把握して、TARCでアトピーの皮膚炎の勢いを見て行きます。つまり、今まではアトピー診療はもっぱら皮膚症状を診るだけでしたが、ようやく皮膚科医も、内科医が肝臓病患者の肝機能検査を行うような感じでTARCを検査してより充実したアトピー診療ができるようになりました。大げさに言えばTARCの出現は皮膚科医にとってはとても画期的な出来事です。
アトピー患者さんの中で、薬を塗れば良くなるけど止めればすぐ悪くなる、皮膚科は薬を出すだけといったご不満を強くお持ちの方は是非一度皮膚科のかかりつけ医に相談されてTARC検査を行ってみてはいかがでしょうか。
2010/12/16