アトピー便り

アトピー便り92:検査について

当クリニックはアレルギー科を標榜していることもあって、アレルギーの血液検査を希望する患者さんが多く受診されます。症状に応じて必要な検査を行なうのが保険診療ですので、(患者さんの自己申告のみで)症状が確認できない場合、検査が必要でない場合に検査をしますと患者さん10割負担の自費診療(保険外)となります。検査希望で受診されるほとんどの方は、アレルギー科であれば保険診療でご希望通りに検査ができると思って来院されていますので、その都度説明してご理解いただいています。
特にアトピーに関しては、「他の皮膚科を受診していますが、検査をして欲しいので来ました」とか、「検査をしてアトピーかどうか知りたい」とか言われることがよくあります。「前者」については、(診療は希望されずに)検査だけで受診された場合にはそのままかかっていた皮膚科に戻って検査をしてもらうか、保険外で検査を行なうかになります。診察、治療も希望される転医であれば、症状がひどい場合には初診時に検査を行なうこともありますし、軽症を含めて多くの場合は再診時以降に必要に応じて検査を行なっています(必要がなければ行ないません)。「後者」についても必要であれば検査を行ないますが、アトピーの診断は問診と皮疹の診察による臨床診断によって行なわれるものであり、検査(特にIgE)は参考所見にすぎず、検査でアトピーの確定診断をするわけではないことを説明させていただいています。
一方で、こちらから積極的に検査をしたいケースもあります。中~重症アトピーの初診の患者さん、きちんと外用療法を続けながら症状の改善が十分でない場合、乳幼児期から小児期になって症状が悪化した場合、時期を問わず症状が急変した場合などです。このような場合にはIgE(RIST)(全体のアレルギーの傾向をみる)、IgE(RAST)(卵、ミルク、ダニなど個別のアレルギーをみて悪化因子を調べる)、TARC(アトピーの皮疹の重症度をみる)などを必要に応じて検査します。またパッチテストパネル®でニッケル、コバルトなどの金属アレルギーを含めた湿しん(かぶれ)の悪化因子を調べることもあります。
尚、検査の採血は一瞬痛いので、幼小児は通常嫌がります。パッチテストは3日間入浴ができませんし、二日後、三日後の受診が必要となります。TARCに関しては、その値と皮疹の経過によっては繰り返し検査をしますが、患者さんによっては検査の意義をなかなかご理解いただけません。また、すべての検査において通常の診療代に加えて検査代が余分にかかります。このような具合を踏まえて、こちらが検査を提案しても患者さんから辞退されることも珍しくありません。
当クリニックは検査をしない(してくれない)と思われがちのようですが、上記のような患者さん目線と皮膚科医目線の違いで誤解されているのかもしれません。先ずは患者さんの症状を治すことを念頭に置きながら、アトピー診療では検査の意義は大きいのでこれからも必要に応じて行なっていきます。検査に関して何か気になることがありましたら診察時に遠慮なくご質問ください。

2021/11/1


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