アトピー便り

アトピー便り87:アレルギー検査/すべきかどうか

コロナ禍におけるPCR検査拡充の賛否についてはメディアを通して今なお侃々諤々と意見が飛び交っています。コロナ患者との濃厚接触者や症状の見られる人など、検査が必要な人に対して積極的に行なうべきというのが専門医の主な意見ですが、諸外国を引き合いに出してやみくもに検査を行なうべきという意見も依然根強くあります。
アレルギー診療における血液検査に関しても以前から似たようなことがあります。専門医はアレルギーの疑いのある患者さんに必要な血液検査しか行なわないため、とにかく検査をして原因を知りたいという患者さんとの間には埋めがたいギャップが存在します。実際にアレルギーが心配になって受診された患者さんと診察中に検査をするしないで押し問答になることもあります。
ひとつ誤解しないでいただきたいのは、保険診療ではやみくもにアレルギー検査を行なえないというだけで、保険診療でなければ(全額自己負担であれば)検診と同じで、いつでも調べたいだけアレルギー検査を行なえるということです[もちろん費用はかなり高くなりますが]。
つい先だってアレルギー性鼻炎の症状のみられる(自己申告で、診察時には確認できず)患者さんに季節柄イネ科のアレルギー検査を行なったところ陰性でした。患者さん自身は「毎年なるから」とイネ科のアレルギーを確信されていましたが、イネ科のアレルギーはないものと判断しました。PCR検査と同様にアレルギー検査の感度は100%ではありませんので、フルーツなどを食べてアレルギー症状が見られた場合や鼻炎の症状を直接確認できた時には再度検査が必要と考えています。
また、同じくらいの時期にネコに触れると皮膚が赤くなるということ(自己申告で、診察時には確認できず)でネコアレルギーを心配した患者さんが受診されました。時間が経ってから症状が出ること、結膜炎、鼻炎、ぜんそくなどの症状が見られていないことから当初はアレルギーの可能性は低いものと考えましたが、ネコに触れた時にしか症状がでないということでネコのアレルギー検査をしたところ陽性でした。尚、検査結果を説明する時に改めてお話を聞いたところ、ネコに触れた直後にかゆくなり、鼻炎、結膜炎の症状も出るとのことでした。
後者のように正しく情報を伝えていただいてアレルギーが確認できることもありますので、診察時に症状を直接確認できていなくても今回の2例のように検査を行なうことはあります。ただし、患者さんの自己申告による情報にはバイアスがかかり、前者のように実際に検査を行なっても陽性にならないことが多いので、(保険診療で)検査をすべきかどうかいつも頭を悩ませています。

2020/6/4


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