アトピー便り

アトピー便り65:ヒルドイドについて

昨年来ヒルドイドの成人女性の美容目的での転用処方が問題となり、保険の対象から外すべきという意見が持ち上がっていましたが、今春の診療報酬改定では一応適正使用の徹底を前提にして保険診療の対象となりました。ヒルドイドが保険の対象から外れて最も困るのは軽症のアトピー(性皮膚炎)の患者さんかと思います。軽症のアトピーの患者さんは症状が目立つときにはステロイドの外用を行ないますが、症状が改善してきますと主に(ヒルドイドなどの)保湿剤で症状をコントロールすることができます。実際に前医(特に小児科)でヒルドイドだけを処方してもらっていた患者さんが、転医してきて同じようにヒルドイドだけを処方してくださいと言われることが多く、しばしばその対応に困ります。全くの初診でヒルドイドだけを処方することは通常はできませんので、軽い乾燥肌だけの場合には基本的には前医で引き続きヒルドイドを処方してもらうか、薬局で保湿剤を購入してもらうかのいずれかになります。一方で、患者さん(患児の親御さん)が乾燥肌と思っている症状が実際には湿しんであることも多く、その場合にはヒルドイドを外用するだけでは良くなりませんので、ステロイドを処方しますが、ヒルドイドだけで構いませんと患者さんに言われることもあります。ステロイドを怖がってヒルドイドだけを大量に使用していて、症状の良くならない患者さんは皮疹を適正に評価し直してステロイドを正しく外用する必要があります。
ステロイドにしろ、ヒルドイドにしろ、使い始めには適正量をしっかり塗らなければなりませんが、症状が落ち着いてきたら当初の量よりもかなり少ない量で症状をコントロールできます。アトピーの診療においては血液検査やパッチテストで悪化因子を見つけたり、ヒルドイドやプロペトなど保湿剤でスキンケアを続けたりしていくことも重要ですが、皮膚科医の一番の仕事は患者さんの症状を正しく把握して、(特に湿しんと乾燥肌の見極めをして)患者さんが適切な治療(ステロイド・プロトピックとヒルドイド・プロペトの適切な外用)を続けていくことをサポートすることかもしれません。

2018/5/29

 


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