アトピー便り

アトピー便り94:ケースバイケース

最近ピーナッツアレルギーの小児を診る機会がありました。お母さんのお話がとても正確であったため、血液検査でRAST(Ara h 2)を調べて診断を確定できました。一方で、花粉-食物アレルギー症候群が疑われる成人の方で関連項目の血液検査をしましたが、すべて陰性でした。症状(問診)に関係なく行う検査は保険外で自費となりますが、症状(問診)をもとに行なう検査は保険診療となるので患者さんのお話にはどうしてもバイアスがかかりがちです。
また、サケのおにぎりを食べて数時間後に蕁麻疹がみられたケースもありましたが、患者さんにはアニサキスアレルギーの可能性を説明しました。このような場合にはこちらとしては検査をしたいのですが、費用もかかりますし、患者さんからはご要望もなく経過観察となりました。
アレルギー診療は患者さんごとで異なりますが、共通して最も大事なのは患者さんから得られる正確な情報です。アレルギーはアレルゲンと症状の因果関係、症状の再現性が重要となりますので、食事内容、食材を含めてすべての事象をメモして診察時にご持参いただくと診断の手助けとなります。アレルギーが疑われる場合には詳細な問診が必要となり、診察時間がかかりますのでアレルギーで皮膚科を受診される患者さんは診察終了時間間際の受診を控えられることをお勧めします。

2022/4/28

アトピー便り93:ザ!世界仰天ニュース

先だってザ!世界仰天ニュースで恒例のアレルギー特集が放送され、その中でpork-cat syndromeやクルミアレルギーなどが紹介されていました。[最近はTVerやhuluで(オンデマンドで)後から番組を観ることができますので気になる方はチェックしてみてください]。当クリニックでも過去に小児の重症のアトピー性皮膚炎で悪化因子検索中に豚肉、牛肉、イヌ、ネコのアレルギーが見つかりpork-cat syndromeの予備軍を診断したことがありました。クルミアレルギーについては、最近はかなり確度が高く血液検査(Jug r 1)で診断することができるようになりました。これらのケースでもペットの飼育歴、クルミを食べた直後に症状が出たことがある(繰り返す)など、問診から得られる情報が診断の大きな手助けとなります。このようなテレビ番組でアレルギーが紹介された後は検査希望の患者さんが増えがちですが、検査だけでアレルギーが見つかることはほとんどありません。番組と似たような状況、症状が見られる場合には積極的に皮膚科やアレルギー科を受診されることをお勧めします。番組で紹介された症状と患者さんで見られる(が説明される)症状が実際には異なる場合も少なからずあり、検査をするかどうかは診察医の判断で決められます。検査が必要でなければ(保険診療で)検査はできませんのでお含みおきください。

2022/2/3

アトピー便り92:検査について

当クリニックはアレルギー科を標榜していることもあって、アレルギーの血液検査を希望する患者さんが多く受診されます。症状に応じて必要な検査を行なうのが保険診療ですので、(患者さんの自己申告のみで)症状が確認できない場合、検査が必要でない場合に検査をしますと患者さん10割負担の自費診療(保険外)となります。検査希望で受診されるほとんどの方は、アレルギー科であれば保険診療でご希望通りに検査ができると思って来院されていますので、その都度説明してご理解いただいています。
特にアトピーに関しては、「他の皮膚科を受診していますが、検査をして欲しいので来ました」とか、「検査をしてアトピーかどうか知りたい」とか言われることがよくあります。「前者」については、(診療は希望されずに)検査だけで受診された場合にはそのままかかっていた皮膚科に戻って検査をしてもらうか、保険外で検査を行なうかになります。診察、治療も希望される転医であれば、症状がひどい場合には初診時に検査を行なうこともありますし、軽症を含めて多くの場合は再診時以降に必要に応じて検査を行なっています(必要がなければ行ないません)。「後者」についても必要であれば検査を行ないますが、アトピーの診断は問診と皮疹の診察による臨床診断によって行なわれるものであり、検査(特にIgE)は参考所見にすぎず、検査でアトピーの確定診断をするわけではないことを説明させていただいています。
一方で、こちらから積極的に検査をしたいケースもあります。中~重症アトピーの初診の患者さん、きちんと外用療法を続けながら症状の改善が十分でない場合、乳幼児期から小児期になって症状が悪化した場合、時期を問わず症状が急変した場合などです。このような場合にはIgE(RIST)(全体のアレルギーの傾向をみる)、IgE(RAST)(卵、ミルク、ダニなど個別のアレルギーをみて悪化因子を調べる)、TARC(アトピーの皮疹の重症度をみる)などを必要に応じて検査します。またパッチテストパネル®でニッケル、コバルトなどの金属アレルギーを含めた湿しん(かぶれ)の悪化因子を調べることもあります。
尚、検査の採血は一瞬痛いので、幼小児は通常嫌がります。パッチテストは3日間入浴ができませんし、二日後、三日後の受診が必要となります。TARCに関しては、その値と皮疹の経過によっては繰り返し検査をしますが、患者さんによっては検査の意義をなかなかご理解いただけません。また、すべての検査において通常の診療代に加えて検査代が余分にかかります。このような具合を踏まえて、こちらが検査を提案しても患者さんから辞退されることも珍しくありません。
当クリニックは検査をしない(してくれない)と思われがちのようですが、上記のような患者さん目線と皮膚科医目線の違いで誤解されているのかもしれません。先ずは患者さんの症状を治すことを念頭に置きながら、アトピー診療では検査の意義は大きいのでこれからも必要に応じて行なっていきます。検査に関して何か気になることがありましたら診察時に遠慮なくご質問ください。

2021/11/1

アトピー便り91:2021秋

寒くなるのにつれてアトピーで受診される方が増えてきました。寒暖差に伴い、日中に汗をかいて余計に症状がひどくなる方も目立ちます。早めの治療、スキンケアを心がけてください。初診で症状の目立つ方や再診の方でも症状の悪化時、いろいろ心配なことをお話されたい、疑問に思うことについて納得いくまで説明を聞かれたい時に、土曜日ならびに診察終了時間間際に受診いただいた場合には十分な時間をご用意できないことがあります。その際は曜日、時間を変えて間近に再診いただければと思います。
タクロリムス(プロトピック®)軟膏を使用していて、その刺激症状にお困りの方も多いかと思います。特に小児ではタクロリムス軟膏を継続できない方も珍しくありません。最近非ステロイドのアトピーの治療薬としてコレクチム®軟膏が使用できるようになりましたので、このような方は一度お試しいただくと良いかもしれません。
アトピーで症状の目立つ(中等症以上の)方のために非常に効果の強い注射薬(デュピクセント®)や内服薬(オルミエント®、リンヴォック®)が最近立て続けに登場しています。その効果は重症の方、特にかゆみの強い方に対しては劇的であり、アトピー治療の新時代到来などとも言われていますが、ステロイド外用剤の治療は継続する必要があり、既存の治療にとってかわるものではありません。非常に高価であること、使用に際していろいろ注意すべきことがありますので、それらを使用する場合は当クリニックでは基幹病院に紹介させていただいております。成人のアトピーで、かゆみの強い方、きちんと治療をしても症状が良くならずにお困りの方、皮膚萎縮などのステロイドの副作用が目立つ方、関心がおありの方は診察時にご相談ください。

2021/10/26

アトピー便り90:2021春

あっという間に前回の更新から半年が過ぎてしまいましたが、依然コロナ禍で緊張感が続く毎日が続いています。季節の変わり目でアトピーの症状が悪化する患者さんも少し目立ってきました。きちんと定期的に塗り薬をつけている方はあまり変わりありませんが、症状がいったん良くなって塗り薬がなくなってからは保湿剤だけで様子を見ていた方で多く見受けられます。症状のあまり強くないアトピー患者さんは肌がざらざらした乾燥肌程度と思われがちですが、実際には湿しんのことが多く、ステロイド外用剤、もしくはタクロリムス外用剤を正しく塗らなければなりません。この状態で保湿剤(多くはヒルドイド)のみの外用が続きますと、少しずつ症状が悪化してしまいます。一方で、魚鱗癬のあるアトピー患者さんではステロイド剤を外用しても症状があまり変わらないことがありますので注意が必要です。
ホームページをご覧になってから来院される患者さんが多いのか、新型コロナウイルスのPCR検査で保険診療と自費診療の違いが広く認識されるようになったせいか、アレルギー検査をする、しないで押し問答になる機会はほとんどなくなりました。引き続きアレルギー検査については必要な検査のみ保険で行ない、それ以外は自費で行なっていますが、季節柄スギ、ヒノキのアレルギーを確認する事例が多くなっています。他医で納豆アレルギーの診断を受けたサーファーの方がセカンドオピニオンで受診された以外には特別なアレルギーの事例は最近診察する機会はありませんでした。

2021/4/6


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