アトピー便り
〇ここのところスギ花粉の飛散が多くなり、皮膚のトラブルで受診される患者さんが増えてきました。少し前になりますが、立て続けに小麦アレルギーの患者さんを二人診る機会がありました。一人目はケンタッキーフライドチキンを食べた直後に運動をしてアナフィラキシー様の症状が起こって後日受診されました。過去にも食後に運動をして何回か蕁麻疹が出たことがあり、一度はパスタを食べた後とのことでした。一連の経過から小麦依存性運動誘発アナフィラキシーを疑い血液検査を行いました。IgE(ω-5グリアジン)陽性で診断を確定することができました。二人目は食事後走った後に喘息様の症状とめまいが起こり後日来院されました。同様に小麦依存性運動誘発アナフィラキシーを疑い血液検査をしましたが、IgE(ω-5グリアジン)は陰性で、IgE(小麦)のみ陽性でした。今回の検査では原因の特定はできませんでしたが、問診でイネ科の花粉症やフルーツのアレルギーを申告されましたので、花粉-食物アレルギー症候群関連のアレルギーの可能性もあります。また、別の食材による食物依存性運動誘発アナフィラキシーも疑われますので更なる検索、注意が必要となります。
〇症状が良くならないのでアレルギーを調べてほしいといきなり検査希望の初診の患者さんが数多く来院されますが、やみくもに検査をして症状の原因につながるアレルギーが見つかることはほとんどありません。今回のように患者さんからのいろいろな情報(エピソード)がアレルギーの診断には非常に重要ですので、このようなエピソードのある方は一度アレルギー科を受診されることをお勧めします。
2023/3/8
〇お昼休み直前に幼児を連れてこられたお母さんにいきなり金属アレルギーの検査をしてくださいと言われました。他医で金属アレルギーの可能性を指摘され、現在は金属成分を制限した食事をしているとのことでした。現在は金属アレルギーを疑わせる症状がないことから、当クリニックでは検査はできないこと、ならびに金属アレルギーのパッチテスト自体を行なっていないことをお伝えしたうえで前医で改めて検査をしてもらうようにお話しました。すると保湿剤だけ出してくださいということでしたが、初診で保湿剤のみの処方はできない旨説明したところ激怒して帰られました。・・・。
2023/2/16
〇少し前の話ですが、顔の湿しんでコレクチム(0.25%)®軟膏、お尻の湿しんにステロイド外用剤、抗ヒスタミン剤内服を処方した子どもさんが約1年ぶりに2回目の受診をされました。今回は特別な湿しんはなく、お母さんが保湿剤のみ希望されました。当クリニックでの2回の受診の間は別の小児科でワセリン、ヒルドイド®を大量に処方されていました。一度は治療をしていたこともあり、今回のみ保湿剤を処方しました。保険診療では皮疹がなく、保湿剤だけの処方を続けることはできないことを説明させていただきました。
〇軽いアトピー性皮膚炎の場合でも通常は弱いステロイドやプロトピック®軟膏やコレクチム®軟膏などを一時的に繰り返し使用することが多く、保湿剤だけで済むことはほとんどありません。実際にすでに湿しんがあるにもかかわらず、「保湿剤だけでは乾燥肌が良くならない」と言われる患者さんが数多くいらっしゃいます。これらはステロイド忌避に伴う保湿剤の偏好によりますが、症状がひどくなってから受診されるケースが後を絶ちません。一度症状がひどくなりますと、強いステロイドを広範囲に使わなければなりませんが、ひどくならないうちに適切に早めにステロイドを外用すればその使用量も少なく抑えられます。
〇長期間にわたって保湿剤だけで済む(湿しんなどの症状が見られない)のであれば、すでにアトピー性皮膚炎が寛解した可能性が高く、その場合は薬局で市販されている保湿剤だけを使用するので構いません。一方で一度治っていたアトピー性皮膚炎が再発することはめずらしくありませんので、乾燥肌だけでなく、かゆみが強くなったり、湿しんなど少しでも変化があればためらわず早めにかかりつけの皮膚科を受診してください。
2023/2/13
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〇半年くらい前に顔面の皮疹で受診された患者さんが2回目の受診で来院されました。初診時は他医でステロイド、プロトピック®軟膏、コレクチム®軟膏を外用しておりましたが、肌に合わないとのことで当クリニックのホームページを見てモイゼルト®軟膏を希望されました。結局初診時以降、処方したモイゼルト軟膏を含めて何も外用はしていないとのことで、患者さんのご要望は替わりの内服薬がないかということでした。明らかな皮膚炎が見られることから、外用に替わる内服治療薬はない(処方しない)こと、外用剤の効果を見ながら治療の変更、継続をしていくことをいくつかの外用パターンを示して説明させていただきました。すると、治療(処方)は要らないとのことでしたが、処方はしなくても診察料金はかかる旨を伝えたところ「二度とここには来ません」と言い残して帰られました。そもそもアトピー性皮膚炎として治療をしていましたが、アトピー性皮膚炎の治療には定期的な診察が必要ですし、場合によっては接触皮膚炎なのか、あるいは別の皮膚病かどうかを鑑別する必要があり、そのためには全身の皮疹の観察、詳細な問診、経過観察、さらには検査が必要となります。実際のところ2回の診察でこれらは十分に(ほとんど)できていません。患者さんにとってもこちらにとっても後味の悪い出来事でした。
2023/1/16
〇水ぼうそうは通常は再感染はなく、2回目の発症は帯状疱疹になります。ところが、高齢者を中心に免疫不全の方ではたまに水ぼうそうが再感染することがあります。最近幼少期に水ぼうそうになったことのある、全身に皮疹がみられる若い患者さんを診察する機会がありました。他医では単純ヘルペスの診断を受けて治療を受けていましたが、皮疹はどう見ても水ぼうそうでした。正直なところ水ぼうそうの再感染は念頭になく、水ぼうそうの初感染ではないかと考えていました。以前の水ぼうそうはもしかしたら手足口病など、他のウイルスによる感染症の症状でないかと思っていました。水ぼうそうかどうかを確定する目的で血液検査(水痘・帯状疱疹ウイルスIgM,IgG抗体)を行ないましたが、その結果は水ぼうそうの初感染ではなく、再感染を示唆するものでした。若い人の水ぼうそうの再感染は極めてまれですが、一度水ぼうそうにかかった後に水ぼうそうの感染者(多くは小児)に触れることなく長期間過ぎますと、ブースター効果が表れずに健常な(免疫不全のない)人でも水ぼうそうに再感染することがありますのでご注意ください。
2023/1/13
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