アトピー便り
〇暖冬ということもあってか、アトピー性皮膚炎の患者さんにおいては例年に比べて皮膚の乾燥によるかゆみで急激に悪化する方は比較的少ない感じですが、早めの治療ならびに保湿のスキンケアは引き続き励行してください。
これも少し前の話になりますが、患者さんに怒られた2例を紹介します。水曜日の外来は午前診療のみで、患者さんがいなければ通常定刻で入り口のドアを閉めます。ある日戸締まり直後にインターフォンが鳴って「診察をしてください」とのこと。職員が「外来は終了しましたので明日以降来てください」とお伝えしたところ、「以前に来ているのにどうして診てもらえないのか」と押し問答になりました。午後診療がある日とは違って受付のコンピューターもシャットダウンしていますし、会計等の事務処理もすべて終えていましたのでその旨お伝えしてお帰りいただきました。せっかく来ていただいのに大変申し訳なく思いつつ、患者さんは定期的に来られていたのだろうか、しょっちゅう来られていたのだろうか、いつも時間間際に来られる方でたまたまタイミングが悪かったのだろうか、などと思いを巡らせました。フライングで早めに終了したわけでもありませんし、定期的に頻回に来られている患者さんならきちんと時間内に来られるだろうし、あんな押し問答になることはないだろうと思うと少しモヤモヤした気分になりました。
〇前腕と太もも、おしりに皮疹が出て受診された患者さんに、かゆみはなく、思い当たる原因がないとのことで一通り診た後あせもくらいしか思いつかないとお話したところ「あせもは肘の前にできるから自分でわかる。そんなんではない。良く見もせずにいいかげんな。時間の無駄。」と怒ってキャンセルして帰られました。通常であればここから鑑別診断、対症療法、経過観察のお話をする流れになりますが、取り付く島もありませんでした。診察時には中毒疹や特別な皮膚病を考える程はっきりとした皮疹はみられませんでした。強い日差しに当たったり、服が密着して汗をかいたりして前腕やおしり、太ももにあせもができるのは珍しくありませんので、今でも見立ては変わっていません。もちろん経過が分からないので正解だったかどうかはわかりません。患者さんにすれば広い範囲に今までに見たことの無い皮疹が出たことから特別な皮膚病を心配されたのだろうと思います。こちらとしては一見して特別なものではないと判断したのは事実なので、おざなりな見方・対応をしていると患者さんに感じさせてしまったのであれば反省するところです。とはいえそこまで言われる筋合いはないのですが・・・。一方で早とちりや勘違い、思い込みなどで患者さんに不快な思いをさせてしまったり、たまには誤診してしまったり、全面的にこちらが悪いケースも過去にはいくつか身に覚えもあります。コミュニケーション能力が高くないことは自覚していますし、実際に後からインターネットの書き込みで痛烈に非難(ほとんど誹謗中傷?)されているのを見て大変傷ついたことも数多くあります。このような書き込みの多くは一方的な言い分で、議論や反論・訂正もできませんので最近は意識して見ないようにしています。普段からより良い診療が提供できるように今回のようなケースを含めて自らその都度省みています。
2024/1/6
〇しばらく落ち着いていたアトピー性皮膚炎の患者さんで急激に悪化するケースが段々増えてきました。普段から保湿のスキンケア、早めの治療開始、症状に応じた外用治療を心がけてください。寒暖差、気温の低下に伴う皮膚の乾燥はアトピー性皮膚炎に限らず皮膚のトラブルにつながりやすいのでこの時期はお気をつけください。
〇以前に経験したお薬だけ2例を紹介します。1例目は、診察終了時間間際に来院されて「水虫で他の皮膚科で2週間治療している。薬だけ出して欲しい。」とのこと。お薬だけが欲しいのであれば薬局に行けば同じ効能の薬を簡単に購入できるのですが、おそらく費用のことを考えられたのでしょう。さらに言えば、簡単に診察を済ませば転医しても余分な初診料や検査代などがかからないと思われたのかもしれません。一応「初診なので真菌要素の顕微鏡検査をしなければなりませんが、すでに外用治療を行なっているため検査をしても水虫を確認できないかもしれません。その場合水虫の治療は行なえません。」とお答えしました。2例目は、他の皮膚科でじんましんとにきびの治療をしていて薬を希望。薬の詳細(名前)は不明。診察時にじんましんの症状は確認できず、にきびの症状については治療しても良くならないとのことでしたが、推移は不明。結局2例ともキャンセルして、前医でもう一度治療を続けられるようにお伝えしました。
〇2例ともこちらの診察は眼中になくて何はともあれ前医と同じ(ような)薬を出して欲しいということでした。アトピー性皮膚炎など、診察時に皮疹・経過を確認できて(診断にあまり困らずに)それまでの治療経過(治療薬)がはっきりしている場合にはつなぎの薬として同じ(ような)薬を処方することはあります。ところが、1例目の水虫患者さんは、初診であれば顕微鏡検査が必須になりますのでお薬だけを出すことはできません。2例目もじんましんの症状をこちらでは確認できていませんし、にきびについては治療薬と経過がはっきりしていませんのでいきなりお薬だけを出すことはできません。いずれのケースも前医であれば容易にお薬を出してもらえますし、経過を踏まえて適切に治療を変えてもらうこともできます。他の疾患で来院されたことがあって、相互理解、信頼関係のある患者さんであれば話は変わりますが、皮膚科専門医としての一分(いちぶん)もありますので今回のようなケースで初診患者さんに対してご要望通りに機械的にお薬だけを出すことはありません。おそらく前医はコミュニケ-ション能力が高く、信頼のおける人気の皮膚科医であったのだろうと推測されますが、願わくば此方に対しても最低限のリスペクトは持っていただきたいものです。
2023/12/2
〇寒暖差が激しく、汗をかいたり、皮膚が乾燥したり、そのため一時落ち着いていたアトピー性皮膚炎の患者さんの皮疹の急激な悪化がちらほら見られるようになりました。重症化予防のため早めの治療、スキンケアの継続を心がけてください。
〇ある日の夕方5時頃、受付にくるみを食べた直後に口のまわりが赤くなって、咳き込んでいるので子どもを診てもらえないかと親御さんから電話で問い合わせがありました。喘息様症状と思われ、重症化する可能性のあるくるみアレルギーが疑われましたので救急対応のできる病院の受診を勧めました。すると、すでにお薬は別の病院で抗ヒスタミン薬をもらっていて内服したとのこと、薬はどのくらいで効果が出るのか、それほどひどくないのにどうして診てもらえないのか等強い口調で言われました。喘息様症状については皮膚科では対応しかねることをお伝えしてどうにか納得していただきました。主治医に一度診てもらっていながら、(おそらく連絡がとれなかったとはいえ)診察していない皮膚科医がどうして電話越しに患者さんから責めたてられないといけないのだろうかとモヤモヤした気持ちになりましたが、後から考えると親御さんからしたら相当ご心配、ご不安だったのだろうと思われます。その後は分かりませんが、適切に対処され、アレルギーの診断がきちんとなされていることを願ってやみません。
2023/11/1
〇少し前の話ですが、半年ぶりに重症のアトピー性皮膚炎で受診された患者さんが再診されました。初診時は1週間分の外用剤を処方して再診時の皮疹の状況で治療を変更する予定でした。今回の皮疹も中等症以上の症状でコントロールは不良でした。元々他の皮膚科を受診されてはいましたが、皮疹の状態と処方量を考えて、治療が足りない旨を一方的にお話していました。しかしどう考えてもその時の皮疹は、当クリニックの半年前の1回分の処方量だけでは有りえないのでお話をよく伺ったところ主治医が別にいて予約がとれないのでこちらに来たとのことでした。それを伺って、それ以上の説明は止めて次に主治医にかかるまでの少量のみ処方しました。確認はしていませんが、初診時も同じような感じで受診されていたのかもしれません。その後再診はもちろんありません。このようなケースは日常茶飯事ですが、これを機会に主治医を変えたい、セカンドオピニオンを求めたいといった患者さんにおかれましては診察時にその旨お伝えください。改めてお話、ご説明させていただきます。
〇首まわりにあせもをこじらせたような紅斑で受診された患者さんに弱いステロイドの外用剤を処方しようとしましたが、小さいころにステロイド外用剤を使っていてその蓄積で肘の前に色素沈着が残っているのでステロイドを使いたくないとのことでした。幼少期にアトピー性皮膚炎があったものと推測されますが、ステロイド外用剤の不適切使用による典型的なステロイド忌避のケースでした。一方的にステロイド以外の薬を強く希望されましたので、条件反射的に現在の皮疹に対してはステロイド以外には治療薬はないとお答えしてしまいました。その上で色素沈着がステロイドによって起こったというのは誤解である可能性が高いこと、ステロイドを最初に使ってその後の状況でステロイド以外の薬に変更したりする旨を説明しました。結局ステロイドを使うのであれば、治療はしなくていいとのことで、受診自体をキャンセルしました。後から振り返れば、あせもの症状だけであれば何もしなくても症状が軽快する可能性もありますし、あせものよりで感染を起こしかけている場合にはステロイドの外用で悪化する可能性もあり、抗生物質の外用剤でひとまず様子をみるという選択肢もあったのかもしれません。
〇二例とも医師側の対応如何によっては違った診療結果になっていたかもしれません。当方のコミュニケーション力、咄嗟の判断能力、冷静さの不足を痛感させられた出来事でした。
2023/10/2
〇最近アレルギーの診断に至った小児2例を紹介します。1例目は、乗馬の後だけ目のまわりにじんましんが出るということで血液検査をしたところ、ウマ皮屑陽性、イネ科(マルチアレルゲン)陰性の結果よりウマアレルギーが確定しました。2例目は、リンゴ、モモを食べた後にのどがイガイガするとのことでリンゴ、モモのアレルギーを疑い血液検査をしたところ、リンゴ、モモともに陽性でした。リンゴ、モモによる口腔アレルギー症候群でしたが、花粉-食物アレルギー症候群によるものを疑い、後日追加検査をしたところ、はんのき、しらかんば、ぶたくさ、Gly m 4(豆乳)陽性で診断は確定されました。スギ花粉症は自覚症状もありましたし、検査でも一番高値を示していました。スギ花粉症の時期とはんのき花粉症の時期は被りますのでしばしば見落とされがちです。生活習慣、行動状況からはんのき花粉症からリンゴ、モモのアレルギーが誘発されたものと考えられました。このように2例ともに患者さんからの情報に基づいて検査をして診断に至りました。アレルギーの診断に至るほとんどのケースはこのように患者さんからの正確な情報に基づくもので、やみくもに検査をして有意義なアレルギーがたまたま見つかることは先ずありません。夏から秋にかけてはイネ科、雑草の花粉症が見られる時期ですので、それに伴ってメロン・すいかなどのアレルギー(食べた直後にのどがイガイガする)が見られることもあります。何はともあれ「アレルギー検査をしてください」ではなく、アレルギーが心配になる理由、具体的な症状・経過をお話いただいてその情報をもとに検査をすれば有意義なアレルギーが見つかるかもしれません。
2023/9/1
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