アトピー便り
最近よく小さなお子さんのお母さんからあせもがひどくて診てくださいと言われますが、あせもではなくアトピー性皮膚炎そのものの悪化であることがよくあります。あせもは汗をシャワーで流したり、水をしぼった濡れタオルでやさしく拭いたりすることでスキンケアを行うことが大事です。かゆみが強い場合や明らかな湿しんになっている場合を除いては基本的にはあまりステロイド外用剤を使いません。一方、アトピー性皮膚炎も汗によって症状が悪化することが特徴ではありますが、軽いあせもとは違ってステロイド外用剤での治療が欠かせません。アトピーが悪化していながら、あせもと考えて治療が遅れてしまいますとますますひどくなってしまいます。元々乾燥肌の傾向がある子どもさんにつきましてはあせもかなと思ったら皮膚科専門医を受診してアトピーかあせもかどうか診てもらうことをお勧めします。
2011/6/26
いまだに乾燥注意報が発令される日々が続いています。ところが日中は汗ばんだり、強い日差しが照りつけ始めましたので、症状の落ちついていたアトピーの方は急激な悪化にご注意ください。シャワーや水をしぼったタオルでやさしく拭くなど、汗に対するスキンケアや肌にやさしい日焼け止めの使用などを心がけてください。
先だってアトピー勉強会を開催しました。1名の参加でしたが、直接いろいろお話をお聞きすることが出来て大変勉強になりました。普段患者さんや親御さんが疑問や不安に思っていることと、こちらが診察の時にお話する内容とに微妙に差があるのではないかと感じることもあります。通常の外来診療では十分に時間がとれないこともあり、こちらが伝えたいことを一方的にお話するだけで終わってしまうことが多くなってしまいます。アトピー勉強会を通して患者さんや親御さんのお話を伺いながら、医師患者間の相互理解のもとでより良いアトピー診療を行うために今後も続けていこうと考えています。一回だけの勉強会では十分でない場合には何度でもご参加いただいても構いません。また、参加者同士の情報交換の場としてもご活用いただければと考えていますので多数の方にご参加いただければと思います。詳細は当ホームページ内のアトピー勉強会のご案内をご参照ください。
2011/4/29
冬場の乾燥により症状が悪化していたため治療をきちんと続けていた患者さんの中で、つけ薬がきれてもそのままで様子をみていたために急激に悪化してしまったケースや、汗をかく機会が少しずつ増えてきて、かゆみによる掻きこわしのために悪化する患者さんが増えてきました。一度症状がひどくなりますと、強い治療をしっかりと続けなければなりませんので早めの治療ならびにスキンケアの継続を心がけてください。
ステロイド恐怖症、ステロイド忌避の方が依然ごくわずかながらも見られますが、適切な治療を行えばステロイドの使用量を少なくしたり、ひいては中止もしくは中断したりすることもできます。ステロイドのつけ薬は正しく使えば恐くありません。主治医の皮膚科専門医の説明をよく聞いて、適切な治療を継続するようにしましょう。
2011/4/5
深夜のザックジャパンのアジアカップ決勝戦観戦による睡魔にも負けず、先だって第1回日本皮膚科心身医学会に出席しました。
なじみのないことが多く、いろいろ勉強になりました。その中で特に印象に残ったのが、短期療法(ブリーフセラピー)の講演でした。講師の漫談のような楽しい話は興味深く、特にアトピー患者さんの診察中に使ってはいけない言葉というのが数多く例示されていました。個人的によく使う言葉が少なからず含まれており、大いに反省させられました。そこかしこにコーチングなどで出てくる内容が含まれており、改めていろいろ勉強する必要があるのを感じた一日でした。
2011/2/5
先だって日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会に出席しましたが、大変興味深い内容に満ちあふれ大いに勉強になりました。その中でトピックとして最も多く話題となっていたのはTARCでした。TARCはアトピー(性皮膚炎、以下略)の炎症の病勢をみる血液検査で、2008年からすでに保険適応となっていましたが、個人的にはアトピーの診断の手助けにたまに利用する程度でした。この2年間でアトピーでのTARCのデータが数多く集まり検討された結果、アトピー診療において治療効果を判定する際に最も信頼のおける指標となることがわかってきました。
一方、アトピーの治療では症状が現れたら外用するという対症療法が中心でしたが、最近は症状の有無にかかわらず週に2~3回外用するプロアクティブ療法が注目されるようになりました。これは外用を止めた途端にアトピーの症状が悪くなる例が多く、それを改善するべく考えられたものです。先の学会では、症状が良くなって治療を止めると直ぐに再発する例の多くがTARC高値で、TARCの値が正常の場合には治療中止直後の再発がほとんどないことが報告されていました。プロアクティブ療法が有効な例の多くは一見アトピーが良くなっているようでもよく見ると症状が残っており、TARCの値も正常になっていないとのことでした。これらよりTARCの値を正常に保つ(していく)ということがアトピーをしっかり治す(コントロールする)ことにつながるということが強調されていました。
肝臓病では、体がだるいなどの臨床症状に始まり、エコーやCT、MRIなどで画像として肝臓の状態を見るほか、GOTやGPTなどの血液検査で肝機能の具合を見て行きます。アトピーに置き換えれば、かゆいという症状に始まり、直接皮膚を見たり、触ったりしながら皮膚炎の状態を把握して、TARCでアトピーの皮膚炎の勢いを見て行きます。つまり、今まではアトピー診療はもっぱら皮膚症状を診るだけでしたが、ようやく皮膚科医も、内科医が肝臓病患者の肝機能検査を行うような感じでTARCを検査してより充実したアトピー診療ができるようになりました。大げさに言えばTARCの出現は皮膚科医にとってはとても画期的な出来事です。
アトピー患者さんの中で、薬を塗れば良くなるけど止めればすぐ悪くなる、皮膚科は薬を出すだけといったご不満を強くお持ちの方は是非一度皮膚科のかかりつけ医に相談されてTARC検査を行ってみてはいかがでしょうか。
2010/12/16
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