アトピー便り
アトピーかどうかをはっきりさせたい、とにかく治してほしい、原因を突き止めたい、疑問があるので説明を聞きたい、ステロイドについて知りたい、現在の治療でいいのかセカンドオピニオンを求めたいとか、アトピーの患者さんならびに親御さんの受診目的は様々です。患者さんに受診していただいた目的をこちらがきちんと把握できるように当クリニックでは問診表で初診時に受診された理由をお伺いしていますが、それでもなかなか受診目的が伝わってこない場合があります。特に再診時には医師側は症状がよくなっているかどうかにもっぱら目が行きがちですが、患者さんの関心事は診察のたびに変わってきます。診察の時には気になること、疑問に感じることをご遠慮なくお話していただいて、すっきりしてお帰りいただければと思います。
2012/6/7
アトピーの患者さんは治療の期間が長くなることが多く、受診回数も多くなります。定期的に診察を受けられていた方が久しぶりに受診された場合にはいろいろ考えます。(1)症状が良くなっていて、久しぶりに症状がひどくなった。(2)症状は変わらないが、手持ちの薬を倹約しながら使っていた。(3)他の皮膚科もしくは小児科で治療を受けていたが、何らかの事情で再び受診した。
症状の軽い方は上記のいずれの場合でも大きな問題になることはありませんが、症状の重い方はそれぞれのケースで対応が変わってきます。(1)では治療を今まで通り続けていくので構いません。(2)では改めて薬の塗り方、使い方が正しいかどうかをしっかりと確認しなおさなければなりません。最も対応に苦慮するのが(3)の場合です。
(3)の場合もいろいろなケースが考えられます。当クリニックで良くならないため他の病院を受診していた場合、元々他の病院にかかっていて前回たまたま当クリニックを受診していただけの場合、ドクターショッピングを続けられている場合など。なかなか直接状況をお聞きすることもできませんので、前回のカルテの記載と診察時の症状からいろいろ状況を予想しながら治療を行います。
中には○○皮膚科が混雑しているから来たとか、○○皮膚科がお休みだから来たとか直接言われる場合があります。その瞬間は少しムッとしますが、よく考えると当クリニックを選んで来てくれたことに感謝しなければなりませんし、患者さんから診察は簡単に済ませてくれという意思表示を受けているのでこちらの対応もおのずと決まってきます。
お久しぶりの患者さんにお願いしたいことは空白期間の状況を診察時にすべて伝えていただきたいということです。こちらの治療が効かなかったとか、他の病院を受診していたとかなかなかお伝えしにくいこともおありかと思いますが、アトピーをきちんと治療して、上手にコントロールしていくためにはこれらの情報は欠かせません。皮膚科同士で立場が逆転することもしょっちゅうありますので、いずれの皮膚科を受診される場合でも同様に情報提供をしていただければと思います。
2012/5/30
アトピー(性皮膚炎)患者さんの診療中に患者さんとの間にしばしばギャップを感じることがあります。ギャップの代表的なものを挙げますと、治療のゴール設定、ステロイドに対する認識、症状についての現状把握といったところでしょうか。
先ず、治療のゴールですが、患者さんならびに親御さんは一定期間治療をしたら完治して、治療の必要のない状態になることをイメージしておられますが、医師サイドとしては診療ガイドラインにもある通り、「症状はない、あるいはあっても軽微であり、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない」あるいは「軽微ないし軽度の症状は持続するも、急性に悪化することはまれで悪化しても遷延することはない」状態にすることを目標としています。
ステロイドの外用剤については、患者さんには怖いもの、跡が残るもの、できるだけ使いたくないものといったイメージが先行していますが、医師サイドからは皮疹の重症度にあわせて適切に使用していく必要があり、症状のひどい場合にはかなり大量のステロイドを使用することもあります。症状の動きにあわせて、ステロイドの強さ、使用量を変えていきますので、その都度診察を受けていただく必要があります。
ステロイドを使って症状が変わってきたときに、患者さんから「がさついて黒くなって一向に良くならない」と言われることがあります。多くの場合は「ステロイドを使って症状が良くなってきたので、炎症の跡が黒くなってきている」状態かと思われます。がさついているのは、最近のデータではステロイドを大量に使うと皮膚が乾燥することがわかっていますので、その影響を考えて保湿剤を併用しなければなりません。場合によっては、「ステロイドの使用量が足りないために、かゆみのためひっかいて症状が実際に悪くなっている」状態かもしれません。その場合には治療をしっかりとし直す必要があります。症状によってステロイドや保湿剤の使い方やステロイドを中止する時期など、治療全体が変わってきますので、正しく症状を把握しておく必要があります。
アトピー診療で大事なことは、診察によって患者さんと医師の間のこれらのギャップを埋めていくことだと考えます。特にドクターショッピングを続けられている患者さんならびに親御さんにはそのギャップは埋まらないと思われがちですが、時間をかけてじっくりと主治医に説明を聞いていただければお互いに誤解を解いていけるのではないでしょうか。
2012/5/24
一言でアトピー(性皮膚炎)の診察といっても、症状の軽い方、ひどい方、初めて皮膚科を受診する方、病院を転々としている方、久しぶりの再診の方など、患者さんによって状況がまるで違います。診察時の患者さんの対応も、自分の考えを熱心に話される方、こちらの話を黙って聞いておられる方、疑問点や気になることを適宜質問される方など、千差万別です。
従って、アトピーの患者さんには型どおりの診察はなく、患者さんによって説明する内容も治療を含めた診療内容も変わってきます。また、同じ患者さんでも診察ごとにお話する内容が変わってくることもあります。再診時に症状が良くなっていなかったり、悪化している場合には、正しくつけ薬をつけているかどうかを先ず確かめます。多くの場合はここで引っかかりますが、きちんとつけ薬をつけている場合には症状が良くならない原因を一緒に見つけていかなければなりません。
初診時ならびに再診時でも調子の悪い時には十分な診察時間が必要となりますが、土曜日の午前中、診察の終了時間間際、夏場やお休み明けなど初診の患者さんで込み合う時にはどうしても十分な時間がとれず、患者さんに納得いただけるまでお話をお伺いすることができないことがあります。当クリニックではトップページでご案内していますが、アトピー勉強会を予約制で行なっています。症状の軽重、受診回数の多寡にかかわらず、通常の診療で十分にご理解、ご納得いただけなかった患者さんは是非ご利用いただければと思います。
2012/5/16
アトピーの患者さんならびにお母さんによく「医者によって言われることが違う。どれが正しいのか分からない」と言われます。例えば一目でアトピーと思われるようなケースでアトピーの説明をしていると、「今までアトピーとは一度も言われたことがない。前の医者には乾燥肌としか言われていない。」と戸惑われることがあります。特に以前に小児科を受診したことのある、アトピーの小児のお母さんからよく言われます。これは、アトピーはアレルギーによっておこるため治らないものだと多くのお母さんに深刻に受け止められているため、小児科医および一部の皮膚科医が意識的に乾燥肌という表現で説明を行なっているためかと思われます。小児のアトピーは7~8割は症状が軽く、たいていの場合経過とともに症状は軽くなり、ひいては多くは治ります。アトピーは皮膚のバリア異常による乾燥肌がきっかけとなって起こる湿しんでもあり、小児のアトピーでは症状の軽い場合には乾燥肌と言っても問題はありません。
一方で、アトピーの一部の重症例は明らかに単なる乾燥肌とは異なり、アレルギーが関係していることも多く、しっかりと適切な治療を続けなければ治りませんので注意が必要です。前医を受診した時と当クリニックを受診した時の症状に変わりがなければ、先述の乾燥肌かアトピーかについては、軽いアトピーで余計な心配をお母さんにかけまいとするのか、軽いアトピーがひどくならないように注意を払いながらきちんと治療をしていくように促すのか、治療する医者の方針の違いが言葉の違いにつながったものにすぎず、大差はないものと思われます。
当クリニックでは症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎の診断基準に基づきアトピーと思われるものはその旨患者さんならびにお母さんに伝えています。
2012/5/9
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