アトピー便り

アトピー便り29:結局同じ?!

 今から20年くらい前には食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎の治療において皮膚科では食事制限をしなくても自然に食物アレルギーは治るから皮膚の治療だけで良いといった考えが主流でしたが、小児科ではきちんと食事制限をする必要があるという考えが中心でした。
 時は流れて最近では皮膚科、小児科ともまずスキンケアを含めた皮膚の治療を行なって、十分な効果が得られない場合に必要に応じて最低限の食事制限を行なうというコンセンサスのもとで治療をしています。
 ところが、最近一部の小児科で行なわれている免疫療法は少しずつアレルギーの原因となる食物を食べさせて食物アレルギーを改善させるというやり方ですが、これはとりもなおさず昔の皮膚科のやり方を理論的に進めたものではないかと思います。食物アレルギーは軽症から重症に至るまで幅広く、実際の免疫療法は即時型の重症例が中心でアトピー性皮膚炎のみで対象となることはあまりありませんが少し感慨深く感じています。  

2012/7/25

アトピー便り28:あせも?

 アトピー性皮膚炎では汗をかくと症状がひどくなることが多く、外来でもあせもができたと言われることがよくあります。長期にわたって通院しているアトピーの子どもでは、よく見るとあせもではなく、アトピーの湿しんがひどくなっているケースがしばしばです。アトピーでは汗のアレルギーがあると言われており、首のまわり、肘の前、膝の裏、手首、背中など汗のたまりやすい部位がアトピーの好発部位にもなっています。
 夏場にシャワー浴を励行したアトピーの子どもは一般のアトピーの子どもに比べて明らかに症状が軽いという報告があります。このように汗のスキンケアはアトピーの症状悪化を未然に防ぎますので心がけてみてください。但し、石けんでの洗いすぎ、タオルでのこすり過ぎは皮膚のバリアを壊してアトピーをかえって悪くしてしまいますのでご注意ください。
 夏場は日光に当たったり、いろいろな状況によってあせももよく見られます。あせもかアトピーの症状か区別のつかないときには早めに皮膚科専門医を受診されることをお勧めします。

2012/7/16

アトピー便り27:水いぼの治療が痛くない?!

 アトピー性皮膚炎の子どもではしばしば伝染性軟属腫(水いぼ)が見られます。平均1~2ミリ程度の少し光沢のある突起物が皮膚に多発してくるものですが、軟属腫ウイルスの感染により起こります。これはアトピーの子どもは皮膚のバリアの働きが弱く、原因ウイルスに感染しやすいことと、水いぼならびにアトピーの湿しんを引っかくことでまわりにうつしてしまうためです。
 治療はピンセットで中の白い塊をつまみ出すことですが、子どもにとってはとても痛く、たいていの子どもは泣きさけんだり、暴れたりします。従って、治療の前に親子ともども事情を説明しますと、多くの場合治療は見送られます。治療をしなくて済むのは放置しても水いぼは最終的には抗体ができて治るためです。
 一方で、治療をしないでおくと治るまでの間にほとんどの場合いぼは増え続けていきますので、プールの時期にはまわりの子どもにうつす可能性が高くなってきます。一度とらずにおいたものの、いぼだらけになってスイミングスクールや学校から治療をしてくるように促されて再来院されるケースもしばしばです。(多数の)水いぼの治療イコール格闘の始まりで、泣きさけび暴れる子どもを押さえつけて治療するのは皮膚科医にとってもとてもつらいものでした。しかも治療は一回で終わることはなく、何度も繰り返されることになります。
 このたび水いぼの治療の際の痛みを和らげるために痛み止め(局所麻酔剤)のテープを保険診療で使用できるようになりました。今までも一部の医療機関ではサービスとして使われていたようですが、これからは全医療機関で使うことができます。少なくとも以前は治療を見送られてきた水いぼの子どもでも治療を行なうケースが増えてくるかと思われます。テープの貼布時間によって痛みの軽減度は変わりますし、使用に当たってはいくつか注意点がありますので、水いぼの治療でお悩みの親子の方は一度かかりつけの皮膚科医に相談してみてください。

2012/7/4

アトピー便り26:誤解されているアトピーのおはなし(1)

 診察中の会話の中で「検査をしていないからアトピーかどうかわかりません」とか、「アレルギーの血液検査をしてひっかからなかったからアトピーではありません」とかよく言われます。多くの方がアトピーイコールアレルギーの皮膚病と考えているためですが、実際のアトピーの診断は臨床診断のみで行われます。すなわち(1)痒みがあって、(2)左右対称に特徴的な皮疹があって、(3)乳児では2か月以上、そのほかでは6か月以上繰り返し症状が起こる場合にアトピー性皮膚炎と診断します。日本皮膚科学会の診断基準でもアレルギーに関連することは診断の参考項目として挙げられているだけです。
 乳児アトピーの約7割に食物アレルギーを合併していたとの報告もありますが、軽症例が多く、ほとんどが自然に治ります。実際に即時型(重症)の食物アレルギーがみられて、食事制限を厳格に行なう必要があるものはごくわずかです。
 アトピーの悪化因子は乾燥、汗、ストレス、衣類、髪の毛、石けん、シャンプーなどの刺激、引っかきぐせなど多岐にわたり、アレルギーはその一部に過ぎません。アトピーの診断にアレルギー検査は必須ではなく、重症例、難治例などで必要に応じて検査を行ない、それを基に必要最低限の制限を行なうのが原則です。

2012/6/28

アトピー便り25:診察時間

 アトピー患者さんの診察時間は患者さんごと、診察のたびに異なります。初診時、再診時、症状の程度の違い、質問の有無、治療のコンプライアンスの具合などで違ってきます。その他にも、患者さんがあとに多く待っているかどうか、診療終了時間間際かどうかなどでも微妙に変わることもあります。
 具体的には医師側として診察時間を十分にとるケースとしては、初診時ではドクターショッピングを続けられている方や重症例、再診患者さんでは急変時や治療が指示通りに行なわれていない場合、さらには質問を受けた場合などが挙げられます。一方、本来診察時間を十分にとるべき患者さんでも短時間の診察で終わってしまう場合もあります。先述の患者さんが多い時や診療終了時間間際が多くなりますが、その他にもステロイド忌避などいずれかの理由のために患者さんにこちらの説明を受け入れてもらえない場合や子どものアトピーでは当人や同伴のお子さんが騒いでしまってお母さんとお話がきちんと出来ない場合などもあります。
 再診患者さんの場合、過去の診療の記録が残っていますので一度丁寧な説明をした場合には何度も説明することはあまりありません。久しぶりに受診していただいた子どもさんに診察後「早っ!」と言われることもあります。特に症状が軽快している場合、問題のない場合には診察は早く終わりがちです。症状の軽重にかかわらず、再診時でも改めて説明を聞きたいという場合にはその都度申し出ていただければと思います。尚、診察時間がどうしても十分にとれない場合には当クリニックではアトピー勉強会を別途案内の通り行なっておりますのでご利用いただければと思います。

2012/6/16


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