アトピー便り
◯外来では厳しい寒さの到来とともにアトピーの症状が悪化して来院される方が目立つようになりました。定期的に通院されている患者さんはそれほど症状に変動はありませんが、一時調子の良かった患者さんが治療を中止していて急激に悪化するパターンが目立ちます。特に小児の軽症のアトピーでステロイド外用剤をきちんと使って良くなった後、保湿剤だけに切り替えてしばらく時間が経って急激に悪くなってしまう例が後を絶ちません。皮膚科の外来では最近問題となっているヒルドイドを主に保湿剤として使いますが、湿疹病変やかゆみの強いときにはヒルドイドを塗るだけでは良くなりません。治療経過が良好でステロイドの外用を止めたり、減らしたりしてきていた場合お母さんにとってはどうしてもステロイドの外用量を再び増やすことには抵抗があるようです。そこで症状が悪化した時に早めにステロイド外用剤をきちんと塗れば良くなる所をヒルドイドだけをさらに多く塗り続けて悪化させてしまいます。ヒルドイド問題は女性の美容目的での転用使用ですが、アトピーでの誤った使用法についても注意が必要です。ステロイド外用剤を正しく使って症状が良くなれば保湿剤を過剰に使用することはなくなります。ステロイドを必要以上に使って保湿剤の使用を減らすのは本末転倒ですし、適切にステロイド外用剤を使って症状を良くした後に保湿剤を中心に治療を続けていくことが理想です。実際にアトピーの7,8割は軽症ですので正しく治療を行なえば保湿剤中心の治療が可能となりますが、症状の強い場合、悪化因子を取り除くことが難しい場合にはステロイド外用剤を必要最低限に継続もしくは反復して使用していかなければなりません。
2017/12/20
◯アトピー性皮膚炎の診断はかゆみ、特徴的な皮膚症状、慢性・反復性の経過から行ないますが、多くの方は血液検査によって診断をするものと誤解されています。初診時に明らかにアトピー性皮膚炎と思われる患児のお母さんから「小児科で血液検査をしましたが、アレルギーはなかったのでアトピーではありません」と言われることがしばしばあります。また逆に「今まで他の皮膚科で治療していましたが、血液検査をしてアトピーかどうか調べてほしい」と言われることもあります。アトピーかどうかは問診と視診・触診で概ね判断できますのでアトピーかどうかを見極めるために積極的に検査を行なう必要はありません。アトピー性皮膚炎の患者さんの7~8割は軽症ですのできちんと保湿や治療を行なえば症状をコントロールすることができますので多くの患者さんは検査をしなくても問題ありません。一方重症のアトピーの患者さんには悪化因子を探る目的でRASTなどの血液検査を早い段階で行なう必要がありますし、外用剤の治療が適切かどうかを見極めるためにTARCを調べます。つまり多くの軽症のアトピーでは血液検査をしなくてもいいことが多いのですが、難治もしくは重症のアトピーでは積極的に検査をしなければなりません。治りにくいアトピーの患者さんでたまに血液検査でアレルギー反応があまり出ていないことがあり、その場合には金属アレルギーやかぶれの悪化因子が潜んでいることが多くパッチテストを行なって悪化因子を探る必要があります。
◯実際に外来ではあまり検査を必要としない患者さんから強く要望されることが多く、早急に検査をする必要のある患者さんに検査を拒否されることが多々あります。昨今のヒルドイド問題を他山の石として検査が必要な患者さんにはきちんと保険診療で行なうように適切に見極めをすることが皮膚科専門医、アレルギー専門医の役割かと思います。
2017/11/9
◯先ず最初にお断りしておきたいことは、アトピー便りの内容はその時に思いつく、お伝えしたいことを不定期に発信していますので、過去投稿のものと重複したり、同じ内容のものが繰り返し出てくることがあります。今後もこのスタイルは変わりありませんのでご了承ください。
◯アトピーの患児の受診の際に親御さんから「乾燥肌と言われて保湿剤だけを使っています」、「保湿剤を使ってもガサガサが治りません」としばしば言われます。多くのケースで前医は小児科のことが多く、治療は保湿剤のみか非常に弱いステロイドを少量使っている程度です。小児のアトピーは軽症が7~8割を占めますので、保湿剤のみでも、あるいは軽いステロイドを少し使うだけでも治るケースが多いのですが、(親御さんのステロイドをあまり使いたくないという思いと相まって)アトピーで一律に弱い治療が行われていて症状に対して治療が不十分なケースで症状が良くなっていないのではないかと思われます。前医も親御さんも「乾燥肌が治らない」といった認識ですが、患児の多くで(触診で)明らかに湿しんが認められます。アトピーの患児は最初に小児科を受診することが多いので小児科では(軽症が多く)強い治療を必要としないことが多いのですが、皮膚科では症状の強いアトピーを診る機会が多いのでステロイドを適切に使用しないと十分に症状をコントロールすることができません。小児科の先生にもよく「皮膚科はすぐにステロイドを使う」と言われますが致し方ありません。乾燥肌か、湿しんか早い段階で症状の程度を見極めて適切に治療を行なえば一部の重症のアトピーを除いて速やかに症状は改善するものと思われます。
2017/10/20
◯アトピー性皮膚炎の患者さんおよび患児の親御さんの多くは一定期間内で完治することを望まれて受診されます。外来で患児の親御さんからしばしばお伺いするのは、初診・再診を問わず「完全に早く治したい」、「ステロイドを使わずに治したい」、「検査をして原因から治したい」といったご意見です。
◯かゆみでつらそうな、症状が目立つ子どもを目の当たりにすると早く何とかしてあげたいと思う親御さんの気持ちは良く分かりますが、アトピー性皮膚炎の治療の目標は,日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドラインにもあるように、「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、その状態を維持することである。また、このレベルに到達しない場合でも、症状が軽微ないし軽度で、日常生活に支障をきたすような急な悪化がおこらない状態を維持することを目標とする」ことで、特に重症例では「完全に早く治す」ことはなかなかできません。そこで経過の良いアトピーの子どもを持つ知り合いの方からアドバイスを受けることが多いようで、外来でもそのアドバイスを元に受診されるケースをしばしば経験します。アドバイスの主なものは、(1)ステロイドは使わずに治す方が良い、(2)ステロイドは使い続けると色が黒くなる、(3)検査をして食物アレルギーの対策をしないと治らない というものです。
◯先ず(1)についてですが、小児のアトピー性皮膚炎の多く(7,8割)は軽症なので治療の内容とあまり関係なく良くなります。実際にステロイドを使わなかったり、弱いステロイドを少し使っただけで治る子どもも多いのですが、残りの2,3割の症状の強いアトピーの患児についてはステロイドを使わずに治すことは難しいのでご留意ください。親御さんに症状を過小評価されていることも多く、症状の強い患児が(ステロイドを使った)十分な治療を行なわないとどんどん症状がひどくなっていきますのでご注意ください。また子供さんがあまりにかゆがるあまり症状を過大評価されている場合もありますので、症状がどんどんひどくなる場合、見た目は大したことはないけどすごくかゆがる場合、いずれも皮膚科専門医に相談してみてください。重症のアトピーの子どもさんでは強いアレルギーが見られることが多く、かぶれ、ストレスなどによるひっかき癖、生活習慣上(汗、乾燥、シャンプー、石けん、洗剤など)の悪化因子なども数多くありますので、これらの対応抜きには症状の改善は望めませんので必要に応じて検査が必要となります。
◯(2)については、湿しんを含めて炎症の跡は火事の焼け跡と一緒で茶色く跡が残ります。早くステロイドでアトピーを治すと茶色い跡はあまり目立ちませんが、こじらせて治るのに時間がかかった場合の跡はしばらく目立ちます。また、塗るステロイドの強さ、塗る範囲、塗る量、治療(継続)期間が十分でないと、いくら治療を毎日続けていても炎症がダラダラと続いて、かゆみで引っ掻き続けて、皮膚が茶色く、硬くなってしまいます。ステロイドを長期間にわたって使い続けて症状が良くならないときには副作用のことはほとんどなく、ステロイドの外用治療が長期間にわたり十分に行なわれていない結果、アトピーの症状が改善していない、場合によっては悪化しているものがほとんどです。ただし、外用するにつれて明らかな悪化がある場合には外用剤によるかぶれ、とびひ、ヘルペスなどの感染症がみられることもありますので、良くなっているかどうかわからず判断に迷うときには早めに(外用開始後数日以内に)皮膚科の主治医の診察を受けてください。
◯(3)については、乳幼児では食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎がありますが、近年食物アレルギーは湿疹などでバリア機能の悪い皮膚から食物に感作されて起こると考えられるようになりました。消化器の発達に伴い2,3歳で食物アレルギー自体軽快するものがほとんどですが、乳児期のアトピーについても皮膚の湿疹をステロイドで早期に治すことが重要で、保湿の継続とともに食物アレルギーの予防にもつながると考えられています。食物アレルギーの治療の最近の考え方は必要最低限の制限です。ひと昔前までは血液検査でアレルギーが少しでも出た場合にアレルゲンを完全除去される場合もありましたが、血液検査はあくまで参考で、実際に食べてみて反応をみる負荷試験で判定します。卵を例にとりますと、黄身は反応が出にくいので食べれることが多く、パンやめんのつなぎには少量しか入っていないので血液検査で卵白が低い数値で陽性に出ていても食べれることがほとんどです。血液検査が高値で陽性の場合、明らかに食べた直後に口のまわりが赤くなったり、じんま疹が出たり、ぜんそくなどの強い症状が出る場合には厳格に制限することが必要となります。乳幼児のアトピーで食物アレルギー検査が必要となるのはきちんとステロイドの治療を続けているにもかかわらず症状が良くならない場合で、多くの場合にはステロイドの適切な外用と保湿を続けることで症状が改善することが多く、アレルギー検査をすぐに必要とすることはあまりありません。検査で低い数字で陽性にでることはめずらしくなく、過剰に反応して制限しすぎないようにすることが必要です。
2017/9/29
◯更新しないまま一年近く過ぎてしまいました。なかなか新しい情報の発信を続けるのは難しいので今回は少しつぶやきたいと思います。
◯外来ではいろいろな患者さんを診察する機会があり、すべての患者さんにご満足いただいているわけではありません。こちらの実力不足、対応・接遇の不備などいろいろ至らぬところはありますが、ご理解いただきたい、出来ればこうしていただければありがたいといういくつかのケースをお話させてもらいます。
(1)顔の症状の診察時にフルメイクで受診 メイクで症状がマスクされるため診察、診断することができません。メイクで症状が分からない状況で「何が原因か、何とかして欲しい」と強く求められた場合に、ふと「メイクで症状がよくわかりません。こちらで診させてもらう場合には今回リセットしてゼロからのスタートになるので前医の先生の方が経過をよく診ているのでもう一度行かれた方がいいかもしれません」とお答えする場合もあります。その場でしっかり落としてもらって改めて診察すればよいのですが、特別な症状でなさそうな場合には湿しんを想定して外用剤を処方し、1週間後にノーメイクでの受診を指示して診察を終える場合もあります。たいていの場合再診はなく、元の症状、経過はわかりませんが・・・。できれば診察直前にメイクを落とす、少なくとも症状のある部分だけでもメイクを落として受診していただきますと助かります。
(2)初診(久しぶりの再診)時に薬を指定される 他の皮膚科を受診されていた患者さんが諸般の事情によって当クリニックを受診されますが、その際「この薬をできるだけいっぱい出して欲しい」と言われることがあります。先ず、病院ごとで取り扱いの薬や診療スタイルが異なりますので内容、量に関しては異なります。終了時間ギリギリなどのよほど時間がない状況での受診を除いては、前医があることを問診時にお伝えいただければ、前の病院での薬の内容、使用状況の確認は行ないます。当クリニックでは初診時には1~2週間(あるいは数日)分の薬を処方して、何回か経過をみてからお薬を増やしたり、変えたりします。「この薬をこれだけ出してください」と言われた場合、さらには「前の病院では出してもらっていた」と強く言われた場合には「前の病院でご相談ください」と言ってしまう場合もあります。一方、診察時に症状が確認できない場合や今までの薬の使用で明らかな効果が確認できないにもかかわらず特定の薬を希望されることがあります。特に外用ステロイドや美容目的の保湿剤(ヒルドイド®)の場合には患者さんの希望が強くてもこのようなケースでは処方しておりません。診察中のご様子からもお忙しい中受診いただいている患者さんのご不満は手に取るようにわかりますが、何卒ご了承いただければと思います。
(3)じんましんでアレルギー検査を(保険診療で)希望される じんましん=アレルギーと一般的には思われていますが、実際にはアレルギーが原因のじんましんは1割前後と考えられています。アレルギー検査(血液検査)は血液中にアレルゲンに対する抗体が増えているかどうかを見ているだけで症状の原因を特定するわけではありません。目がかゆくなったり、鼻水が出たりする方やフルーツを食べたらのどがイガイガするなどの症状が出る方は積極的に検査をする必要がありますが、じんましんでは主治医が検査をする必要があると考えた場合にだけ行なうのが一般的です。症状からアレルギーを疑った場合には保険診療でアレルギー検査を行ないますが、アレルギーを疑う症状がないと主治医が考える場合にアレルギー検査をすると全額自己負担での検査となります。テレビなどでよく紹介されるアレルギーの項目をいっぱい調べる検査は自費であれば2万円近くかかります。説明をさせていただいた上で検査をされる方はほとんどおりません。いろいろな皮膚科を受診しても検査をしてもらえないので当クリニックではアレルギー科を標榜していることから、受診すれば検査できるものと思って来られる患者さんも多く、上記の内容をお話した後では患者さんの落胆、憤りのご様子を目の当たりにすることも多いのですが、ご了解いただければと思います。
◯なかなかご説明を理解していただけない場合、時間が押している場合などではその対応に当方に落ち度が少なからずあることは自覚しております。今後改善していきたいと思っております。尚、ご心配、疑問に感じられることはご遠慮なく診察時にお申し付けください。
2017/8/30
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