アトピー便り

アトピー便り64:魂の叫び

初診から二回目の再診までの間が数か月以上空いた患者さんの中に「前の治療は全く効かなかったので治療を変えてください」と言って受診される方が時折いらっしゃいます。その際に「前の治療が効いていたかどうか分からないのでもう一度しっかり外用して改めて1週間後に診せてください」とお話すると、患者さんからは「前の治療は効かなかったので同じ治療では意味がありません」の一点張りで押し問答になることがあります。
これは患者さんの思い描く治療効果と医師側の考える治療経過にギャップがあることが一因です。患者さんの多くは「一旦治療さえすれば短期間で完治する(再発しない)」「治療によって不都合な症状が出れば治療を止めなければならない」「ステロイド(外用剤)はこわい薬なので使いたくない、使っても出来るだけ少なくして、早く止めないといけない」と考えていらっしゃいます。一方で、皮膚科(専門)医は「正しく治療をすれば症状は改善するが、きちんとできなければ症状は改善しない」「一旦(治療で)症状が良くなっても再発することが多い」「重症の場合には外用療法やスキンケアのほかに悪化因子の除去が必要となる」「タクロリムス(プロトピック)軟膏は使い始めに一時的にかなり火照ることがあるが、1週間くらい使い続けると火照らなくなるのでそのまま使い続けて良い」「ステロイド(外用剤)は正しく外用すれば長期にわたって使用してもあまり問題にならないので、症状が強い場合には適切にステロイド(外用剤)を使い続けなければならない場合もある」と考えています。そこで、このようなギャップを埋めるには、アトピー性皮膚炎では長期間にわたって治療を続けていく必要があること、ステロイド外用剤は正しく使えば重篤な副作用の心配はほとんどないこと、プロトピック軟膏は安全に長期使用できることなど、患者さんに応じて必要な事がらを初診時に理解していただく必要があります。
「良くならないのなら何故すぐに受診してくれなかったのですか」という魂の叫びが、さらには「そんなに(こちらの説明を)全否定せずに、もう少し優しく言っていただければ・・・」「できればこちらの話にも少しは耳を傾けていただけないのかな(一度だけこちらの説明通りにしていただければ・・・)」という魂の叫びが続いて聞こえてきます。最後にもう一つ「どうして小さなお子さんはこちらの顔を見ると泣くのかな。お母さんとお話しているだけなのに」という心の叫びは日常茶飯事ですが、何とかならないでしょうか。

2018/4/4

 

 

 

アトピー便り63:パッチテストについて

アレルギー検査(血液検査)とともに電話でのお問い合わせの多いものとしてパッチテスト関連のものが挙げられます。「パッチテストをしてもらえますか」「金属アレルギーの検査をしてもらえますか」というのが主なものですが、その中でも最も多いのは「(元々金属アレルギーがあって、)今度歯の治療をするので歯科金属の金属アレルギーの検査をしてもらえますか」というものです。保険診療であれば前回(アトピー便り62)のアレルギー検査と同様に、診察をした上で検査が必要と考えられる患者さんに対してパッチテストを適宜行ないます。診察時にかぶれ(金属アレルギー)を疑わせる症状(患者さんご持参の写真でも可)を確認して、問診からかぶれ(金属アレルギー)の候補となるものが特定できた場合には(調べられる)必要最低限のものを、特定できない場合にはスタンダードシリーズ(歯科金属シリーズ)などの検体を使って検査します。
先述の歯科金属アレルギーのお問い合わせのケースですが、(日常生活で見られる)金属アレルギーの多くはニッケルアレルギーなので、金属アレルギーの可能性があるからと言って、必ずしも歯科金属をすべて検査する必要はありません。銀歯の周辺がただれているとか、手足に水ぶくれができてなかなか治らないとか、体中に湿しんができているとか、歯科金属アレルギーを疑わせる症状がなければ通常は歯科金属アレルギーのパッチテストは行ないません。それでもパッチテストをご希望なさる場合には自費(全額自己負担)での検査となりますので、ご了解の上ご相談ください。その際、検査できる項目、料金、日程などにつきましてはあらかじめお問い合わせください。
一方で、経過の長い難治性の湿しんの患者さんに、原因を見つけるためにパッチテストの説明をさせていただくことがありますが、パッチテストでは3日間入浴できないとか、検体貼付後2日目、3日目(できれば7日目も)に受診していただかないといけないということもあり、実施に至らないケースも多々あります。特に、金属アレルギーの患者さんは汗によって症状の目立つ夏期を中心に受診されることが多く、パッチテストを(通常)行なう冬場には(症状が目立たずに)来院される機会があまりなく、パッチテストを行なう機会を失ないがちです。
このようにパッチテストは実施時期がほぼ冬場に限定されてしまうこと、頻回の通院や入浴制限が必要なことからどうしても患者さんの同意が得られず実施できないことが多いのですが、パッチテストは難治性の湿しんの原因検索には大変有用で、直接原因にたどり着く可能性のある唯一の検査でありますので、皮膚科の主治医からパッチテストが必要であると判断された患者さんには是非行なっていただきたいと思います。

2018/3/16

アトピー便り62:アレルギー検査の電話でのお問い合わせについて

患者さんからの電話でのお問い合わせのうち多いものの一つが「アレルギー検査(血液検査)をしてもらえますか?」というものです。患者さんとしては、受診すれば保険診療で即日検査をしてもらえるかどうかを知りたいのだろうと思います。通常の保険診療では、問診をして、診察で症状を確認して、アレルギー性の原因が疑われる場合にだけアレルギー検査を行ないます。つまり、保険診療では医師が必要と考えなければアレルギー検査はしません。一方、アレルギー検査をするだけなら自費(全額自己負担)であれば、即日調べたいものを検査することができます[後で詳述]。
忙しいところせっかく受診しても検査をしてもらえないのなら時間の無駄になるし、受診するだけでも費用はかかるから電話であらかじめ検査できるかどうかを確認して、検査できるのなら受診しようという患者さんのお気持ちも良く分かりますが、保険診療で行なうアレルギー検査には医師の診察が不可欠で、診察前に電話で詳細をお答えすることはできませんのでご了解ください
症状がアレルギーによるものであるかないかの判別には、(診察時の)視診[場合によっては患者さんご持参の写真で確認]や触診のほか、一連の症状の経過を伺って整理することが必要です。これらの結果からアレルギーが疑われる場合、さらに詳しい問診でアレルギーの原因候補を絞って行きます。このようにアレルギーの原因を見つけ出すためには問診が7~8割その役割を担っていると言っても過言ではありません。その問診から原因候補を絞れた場合には必要最低限の検査を、絞りきれなかった場合には幅広く(数多く)検査を行ないます。また口腔アレルギー症候群(花粉-食物アレルギー症候群など)が疑われる場合には一つの症状からいくつかのアレルギーを関連して調べることもあります。
ところで、診察の結果アレルギーの検査が不要と判断した患者さんの中には「それでもどうしてもアレルギー検査をしたい」とおっしゃる方がいます。後述の全額自己負担(自費)であれば検査を行なうことができますので、ご希望なさる方はお申し出ください。検査代だけを自費で、初診料など残りの費用を保険診療で賄うということは(混合診療が認められていない現在は)できませんのでご了解ください。
具体的な症状もなく検診としてアレルギー検査(Viewアレルギー39)を希望される方は自費での診療[検査料金は39項目で総額18810円]となります個別には総計13個[検査料金は1項目5610円~13項目18810円、1項目ごとに1100円料金追加]まで調べたいものを自由に選んで調べることができます(ただし、検査できないものもあります)13個より多い項目を一度に調べる場合には自由に項目を選ぶことができませんので、いくつかの16個の項目のセットメニュー(症状によって特定のセットを選ぶ、症状が確認できれば保険診療の対象になります)から一つを選んで調べます[いずれのセットメニューも16項目で総額18810円]。当クリニックではアレルギー検査の料金を(保険診療に当てはめて)全額自己負担でお支払いいただいておりますので、検査料金は(現時点のものであり)診療報酬改定ごとに変わります尚、美容皮膚科でのレーザー治療と同じように保険診療外(自費)の診療費(検査料金)は病院ごとで異なりますのでご留意ください。
アレルギー検査だけを希望される患者さんは、患者さんが調べたいものが検査できるかどうか、セットメニューの具体的な項目や実際の料金など概要につきましてはあらかじめ電話でお問い合わせの上ご来院いただければと思います。症状があって通常の保険診療を希望される患者さんにつきましてはアレルギーの可能性の有無にかかわらず直接ご来院いただければと思います

2018/3/1

アトピー便り61:突然のまぶたの腫れ

今回はアトピーとは関係ないお話ですが、先日NHKの「ためしてガッテン」にも出演されていた千貫祐子先生のご講演を直接拝聴する機会があり、普段の診療にも活かさなければならないと思った情報がありましたのでご紹介させていただきます。
まぶたが突然腫れて(かゆくなって)、しばらくするとその腫れ(かゆみ)がひくという症状の患者さんを当クリニックでも何人か診察したことがありましたが、いずれも思い当たる直接原因はなく経過観察としていました。その後の受診はなく、原因不明のままです。その場合最も考えなければならないものとして、まぶたを介して花粉症のアレルギーが成立した後に花粉症の症状ではなく、その花粉と構造の似た成分の食べ物(特にフルーツ)を食べた直後にまぶたが腫れる(かゆくなる)というパターンです。かつての悠香の茶のしずく石けんで起こった小麦アレルギーのパターンによく似ています。まぶたの腫れ(かゆみ)は一過性でスギ花粉皮膚炎などの湿しんとは異なり、いずれ自然に消えますし、直接まぶたに何か塗ったり、刺激があったわけではありませんので原因は見落とされがちになります。花粉症の時期であれば花粉症と関連して食物アレルギーを疑うことも時にはあるのですが、花粉の飛んでいない時期には前述の食べ物によって起こるアレルギーの症状も軽いことが多く、その診断にはアレルギー自体を念頭に置いて詳細に問診することが必要となります。
もし原因不明で、食後に出現する一過性のまぶたの腫れ(かゆみ)を起こしたことのある患者さんは一度皮膚科の主治医を受診してみてください。診察時にまぶたの腫れ(かゆみ)がない場合でも花粉症の症状が確認できて、まぶたの腫れを写真に記録してある場合には保険診療で血液検査をして原因を検索することができます。尚、診察時にまぶたの腫れ(かゆみ)も花粉症の症状も確認できなくて、まぶたの腫れの写真などの記録もない場合には検診と同じで全額自己負担になりますのでご注意ください。
尚、今後もアトピーとは関係のないアレルギーの情報も適宜このアトピー便りで提供させていただきますので宜しくお願い致します。

2018/2/21

アトピー便り60:一回の処方量

「お薬をいっぱいください」とか「2か月分お薬ください」とか、アトピー性皮膚炎の患者さんの診察時によく言われますが、一回に処方するお薬(外用剤)の量は当クリニックではだいたい決まっています。初診であれば1週間くらいを目途に再診してもらってその時の状況で内容を変更したり、増量したりしますので、いきなり長期間分のお薬を出すことはありません。重症のアトピー性皮膚炎の場合には大量のお薬を処方することはありますが、数日から4,5日くらいで再診してもらいます。症状が落ち着いている場合、長期にわたって受診されている患者さんでは1~2か月くらいの外用量を想定して処方します。
患者さんの多くはもらったお薬をおよそ1~2か月くらい持つようにその範囲内で使われることが多いのですが、アトピー治療の外用剤の使用に関しては症状が良くならないときには、FTU(成人の人差し指の先から第1関節の長さまで外用剤のチューブから出した量を成人の手のひらの面積約2枚分に塗る)を参照して適切な量の外用を続けなければなりません。外用が不十分なために症状が良くなっていないケースでは処方量を増やすことがありますが、実際の使用量が変わらずに次回受診日が遅れるだけで症状が変わらないことも少なくありません。このような場合には患者さんのご要望に応じて外用剤の処方量を機械的に増やすだけではいけません。
アトピー性皮膚炎の診療では先ず皮疹の評価、経過の把握、必要に応じて悪化因子の検索を行ないながら治療を続けていきますが、症状がなかなか良くならないときには正しい外用方法を指導したり、きちんと外用できているかどうかを逐一チェックする必要があります。まとまった量のお薬の処方だけをご希望になる患者さんも少なからずいらっしゃいますが、必要に応じてこれらを適宜行なう必要がありますのでご理解ください。尚、治療期間が長くて症状が安定している場合、患者さんが混み合っている時や終了間近の受診では診察時間が短かったり、十分に診察時間をとれないこともありますのであわせてご理解いただければと思います。
アトピー治療での一回の処方量は初診か再診か、重症か軽症か、合併症があるかどうか、悪化因子がはっきりしているかどうか、など多くの要因によって変わってきますし、皮膚科ごとの患者さんの混み具合(混み合うところは大量に処方される傾向あり?)や皮膚科医によって考え方が異なりますので、皮膚科医ごとで一回の処方量も変わってきます。最終的には一回に塗る量と塗る期間(受診間隔)で自ずと処方量は決まってきます。症状によって薬自体の内容や一回に塗る量も変わりますし、受診間隔が空けば処方量は増えます。当クリニックでは中~重症のアトピー患者さんを診る機会も多いのですが、1~2週くらいを想定した処方量で1~2か月ごとの受診を繰り返されている患者さんでは症状がだらだらと続いてしまいます。症状の改善しないアトピー患者さんの多くでステロイド外用剤の使用不足と保湿剤(特にヒルドイド)の過剰使用(特に幼小児で)が見られますので、アトピー診療ではこれらを適切にチェックして、指導していくことが大事です。尚、アトピーの7,8割を占める軽症患者さんでは保湿剤中心でステロイド外用剤の使用量も少なくて済みます(受診間隔は空くことも多い)し、重症の患者さんで適切に外用していても良くならない場合には悪化因子の検索(検査)や外用剤以外の治療を検討する必要があります。アトピー治療は十人十色、患者さんごとで変わりますので治療に関しては周りの人の受け売りだけは決してしないように気をつけてください。最後にもう一つ気に留めていただきたいことがあります。アトピー患者さんの中にはごく一部ですが、複数の医療機関で外用剤をこっそり処方してもらっている方がいらっしゃいます。通常の診療では皮膚症状をみて前回までの処方内容(前医のお薬手帳も含めて)とそれまでの受診間隔から皮疹の状況を把握して次の処方を決めていきますが、患者さんからの申告がなければ他医での処方(治療)に関しては全く把握できません。症状のかなり強い方が半年に一度くらいしか受診されていない(多くは症状はほとんど良くならずに再診を繰り返している)ケースでたまに他の医療機関でも外用剤を繰り返しもらっていることが分かることがあります。ヒルドイドに依存しがちな軽症例も含めて、症状をきちんと治すためには一番信頼のおける主治医もしくは継続して通院しやすいところ一か所に絞って必要に応じて繰り返し受診されることをお勧めします。

2018/2/9

 


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