アトピー便り
〇アトピー性皮膚炎の治療はステロイド剤の外用や保湿剤でのスキンケアなど、つけ薬が中心となりますが、一回にどの程度塗るか、どのくらい塗り続けるか、場所や症状によってどのように塗り分けするのか、など必要に応じて診察時に説明させてもらっています。FTU(フィンガーチップユニット)は一回に塗る外用剤の量の目安で、チューブの薬をおとなの人差し指の第1関節分の長さ(=1フィンガーチップユニット)を出して、おとなの手のひらの面積2枚分を塗ると丁度よいというものです。
〇軽症のアトピーではここまで塗らなくてもよい場合がほとんどですが、中等症~重症の場合やすでに不十分な治療をだらだらと続けている場合には一度しっかりとFTUに従って外用剤を塗る必要があります。アトピー性皮膚炎では症状の目立つところだけつけ薬を塗っていますとモグラたたきのように塗っていないところから症状が出てくることが多いので、全体にしっかり塗る必要があります。この塗り方で全身にもれなくつけ薬を塗った場合、6カ月の赤ちゃんでは1回に塗る量が約4g(8&1/2FTU)、2歳児では約7g(13&1/2FTU)、5歳児では約9g(18FTU)、成人では約20g(40&1/2FTU)となり、かなりの量になることがわかります。尚、これは日本皮膚科学会、日本アレルギー学会共通のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018にも明記されています。
〇初診時にはFTUの説明をすべての患者さんにするわけではありませんので、数か月以上経ってから「全然良くなりませんでした」と再診されるケースが後を絶ちません。症状が良くならないときには1~2週間後に再診していただければ、当クリニックでは実際に行なっていた外用療法と症状の推移とを照らし合わせてFTUを含めて外用療法の正しいやり方を詳細に説明させていただいています。
2019/3/2
〇この時期スギ花粉症の方の受診が増えてきている一方で、前々回の「花粉症と食物アレルギー」でもお話しましたが、ハンノキ花粉症の方もこの時期症状が目立ちます。つい先だって患者さんのお話(症状の経過)から食物アレルギーを疑って検査をしたところ、大豆アレルギーほか数多くの食物アレルギーとハンノキアレルギーが見つかるケースが続きました。ハンノキアレルギーは、リンゴ、モモ、ナシ、イチゴ、メロン、スイカ、大豆(主に豆乳)、キウイ、オレンジ、ヤマイモ、マンゴー、アボカド、ヘーゼルナッツ、ニンジン、セロリ、ジャガイモ、トマトなど関連が報告されている食物が数多くあります。特に花粉症の見られるこの時期に食物アレルギーの症状が目立ちやすくなります。花粉症のある方で、これらの食物を食べた直後に毎回のどがイガイガする場合には一度アレルギー科でご相談ください。尚、食べた後に毎回症状が出るのでなければアレルギーではなく、検査する必要はありません。症状がはっきりしないときには何度か食べてみて確認してください。スギ花粉症の影でハンノキ花粉症ひいては大豆(豆乳、モヤシ)アレルギーの見落としが少なからずあるのではないかと感じる今日この頃です。
2019/2/19
〇日本学校保健会で作成されている学校生活指導管理表(アレルギー疾患用)がありますが、アトピー性皮膚炎も対象疾患としてその中に入っています。記入する項目は、重症度、常用する外用薬、内服薬、食物アレルギーの有無、プール指導及び長時間の紫外線下での活動、動物との接触、発汗後における留意点、その他の配慮・管理事項についてで、主治医が記入することになっています。実際にはアトピーの子どもさんは軽症の方が多いので、これを利用することはほとんどありません。ところが、アトピーでも症状がひどくなると見た目も目立つようになりますし、強いかゆみで絶えずひっかいて集中力が欠けたりしますので、学校の先生にも現在の症状のこと、治療のこと、悪化因子などについて、この学校生活指導管理表(アレルギー疾患用)を介して理解してもらい、サポートしてもらう必要があります。学校生活指導管理表(アレルギー疾患用)が必要かどうかは皮膚科専門医の主治医に一度ご相談ください。
2019/2/7
◯花粉症と食べ物、特にフルーツのアレルギーが同じ患者さんで見られることがしばしばあり、花粉-食物アレルギー症候群と呼ばれています。2月を目前にスギ花粉症の時期がもうすぐやってきますが、スギ花粉症患者さんの一部ではトマトのアレルギーが見られることが知られています。一方で、スギの飛散する時期と時を同じくして見られるハンノキの花粉症ではリンゴ、モモ、メロン、スイカ、豆乳の他、数多くの食物アレルギーとの関連が言われていますし、スギ花粉症が終わる頃から飛散の始まるイネ科の花粉症でもメロン、スイカ、小麦など、いろいろな食物アレルギーが見られる場合があります。
◯従って、スギ花粉症患者さんの中で数多くの食物アレルギーが見られる方はハンノキの花粉症の可能性がありますし、スギ花粉症が終わる頃に症状の始まる方はイネ科の花粉症の可能性がありますのでご注意ください。また、花粉の飛散している時期に食物アレルギーの症状が強く見られることもよく知られていますので、これらの傾向がみられる方は一度専門医を受診されることをお勧めします。診察時に症状が確認できない場合にはアレルギー検査は検診扱いで保険外(自費)診療となりますが、症状の見られる時期、症状が確認できる状態で受診されれば保険診療でアレルギー検査を受けることができます。
2019/1/31
〇診療時間は、患者さんから症状の経過や背景を聞く問診の時間、患者さんの皮疹を診たり、触ったりして症状を把握する診察時間、医師から病状や原因・注意事項を説明する時間、患者さんからの質問・疑問にお答えする時間から成ります。特にアトピー診療では問診に要する時間が患者さんによって大きく変わりますし、診察時間も重症な方ほど時間がかかります。さらに検査を行なう場合にはその説明時間も必要となります。
〇初診のアトピー患者さんにはひと通りこれらに時間を費やしますので、通常初診患者さんではそれなりに時間がかかることが多いのですが、外来が混み合っている時や症状が軽い患者さん(さらには外来終了時間ギリギリの駆け込み患者さん)にはどうしても説明する時間は短くなりがちですし、十分に患者さんからの質問・疑問にお答えする時間がとれない場合もあります。一方、再診患者さんについては診察時間が中心となりますので、経過が順調であれば診療時間も短くなり、アトピーの子どもさんに診療終了時に「はやっ」と言われることもあります。
〇初診時でも症状の軽いアトピー性皮膚炎の患者さんでは通常細かく説明をすることはなく、お薬を処方するだけで経過を観る場合もありますが、逆に経過が良くなければ再診時にその都度治療がちゃんとできているかどうか、悪化因子の話をしたり、そのための検査のことを説明したり、お薬の塗り方、保湿剤の使用についても説明したりしますので初診時以上に診療時間が長くなることもめずらしくありません。
〇ところで、何か月も間隔を空けて再診されるたびに「良くなりません」「悪くなりました」と言われる患者さんが時々いらっしゃいますが、先述のような再診時の対応がほとんどの場合できていません。多くのアトピー患者さんは単回の治療で完治することはありませんので、特に重症の場合や患者さん自身が治療の効果がないと思われる場合には数日~1週間程度で再診していただければと思います。
〇アトピー性皮膚炎の患者さんは、「完治させたい」「原因を知りたい」「ステロイドを使いたくない」「今後の見通しを知りたい」「セカンドオピニオンで受診した」など受診動機がいろいろあるにもかかわらず、診療する皮膚科医に伝わらない(言いにくい)ことも多いと思います。また、一度にいろいろ質問をされたいという患者さんも数多くいらっしゃいます。当クリニックではアトピー性皮膚炎の患者さんの割合が非常に多いこともあり、アトピー患者さん用の問診票をあらかじめ別途ご用意しておりますので初診、再診を問わずアトピー性皮膚炎で受診される際は(窓口でお申し出いただいて)ご活用ください。一度受診いただくと(問診票を含めて)診療内容[お話した内容]はその都度カルテに記録していきますので、数多くご質問されたい患者さんは再診の際何回かに分けてご質問いただければと思います。概ね症状に比例してお話することは多くなり、診療時間も長くなりますが、軽症の方でも詳しくいろいろお話を聞かれたいアトピー患者さんは、(予約制でない皮膚科の外来は季節的な変動が激しいので、夏場や連休前後の繁忙期を除いて)冬場などの外来ののんびりした時期を見計らって受診されることをお勧めします。当クリニックを受診されるアトピー患者さんで詳しくいろいろ説明を聞かれたい場合には先述のアトピー問診票がお役に立ちますので是非ご利用ください。
2019/1/9
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