アトピー便り

アトピー便り128:花粉-食物アレルギー症候群にご用心

ここのところ寒暖差が目立ちますが、それに伴う皮膚のトラブルも見られます。これからは春に向かって段々と暖かくなってきますが、アトピー性皮膚炎ではストレスや汗などでも症状が悪化しますのでご注意ください。
スギ花粉症の本格的なシーズンが到来します。中には顔面や頸部にスギ皮膚炎が見られる方もいらっしゃいますが、その場合は外用治療も必要になります。一方で、スギ花粉症と思われる方の中には同時期に飛散するハンノキ、オオバヤシャブシなどの花粉症の方が一部含まれている場合があります。リンゴ、モモ、イチゴなどの果物や特定の食物を食べた直後に口の中やのどに違和感がみられる方は、花粉-食物アレルギー症候群の可能性がありますので一度血液検査をされることをお勧めします。

(蛇足)先だって日本テレビの「カズレーザーと学ぶ」の中でも上記の内容を扱っていました。明日21:59まではTVerでどなたでも観れますのでお見逃しの方は是非ご覧下さい。

2025/3/3

アトピー便り127:治療の継続を

この冬いろいろな感染症が流行していて皮膚疾患の治療は後回しにされがちですが、アトピー性皮膚炎など経過が長かったり、繰り返し起こる皮膚病では治療を急に止めると一気に悪くなることがありますのでご注意ください。少なくとも感染症の症状が落ち着いてからは速やかに皮膚病の治療を続けてください。
アトピー性皮膚炎の悪化、ご年配の方の皮膚の乾燥・かゆみ、寒冷、寒暖差によるしもやけなどこの時期に多く見られる皮膚症状もありますが、一年を通して比較的新患患者さんの少ない時期です。患者さんが多い時にはどうしても診察時間が短くなりがちですので、診察時にいろいろお話をされたい(ご質問をされたい)方はこの時期に受診されることをお勧めします。直接診察の内容と関係ないことでも、皮膚、アレルギーに関することであればご遠慮なくおたずね下さい。尚、リクエストの多いアレルギー検査や保湿剤の処方につきましては保険診療のしばりがありますので、患者さんによって対応が異なります。主治医が必要と考える検査や処方は保険診療で行なうことができますので一度ご相談ください。

(蛇足)以前に受診されていた他の皮膚科で大量の保湿剤を処方されていた方が、初診でいきなり大量の保湿剤を希望されることがあります。また、問答無用で一方的に「保湿剤を出して」と言われて、「出せない」で終わってしまうこともたまにあります。当クリニックでは初診時に治療歴を含めた症状の経過、現在の皮疹の状態が把握できて、必要と認められれば引き続き保湿剤を適量処方します。尚、当クリニックは院内処方のためⅠ回に処方する上限量は限られていますのでご了解ください。また、初診時に皮疹がほとんど見られない場合にスキンケアとして保湿剤だけを処方することは保険診療上できませんので、前医で引き続き処方をしてもらうか、症状がみられる時に受診していただければと思います。

2025/2/2

アトピー便り126:小麦依存性運動誘発アナフィラキシー

先だって久しぶりに小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)の診断をする機会がありました。そのケースは初診の数か月前に食後1時間後に激しいじんましんが見られて救急病院を受診していました(詳細は不明)。初診の数週間前からは不定期にじんましんが見られていましたので、特発性のじんましんとして抗ヒスタミン内服薬で治療をしていました。初診から5か月経った頃、昼食にパスタを食べた後軽い運動をしたところ全身にじんましんが見られたので直接症状を診てもらいたいとのことで自転車を漕いで来院されました。診察時に血圧低下は無かったものの、皮膚症状は重症でした。典型的なWDEIAの臨床経過でしたので、RAST (小麦、グルテン、ω-5グリアジン)を検査して診断は確定しました。尚、今回は幸いにも重症の皮疹に対して抗ヒスタミン薬の内服のみで症状は軽快しましたが、基本的には、呼吸困難、血圧低下など、全身症状が見られる場合も含めて救急対応のできる医療機関を直ちに受診してください。
初診時の問診でWDEIAを疑って積極的に検査を行なっていれば早期に診断ができて、2回目の発症は予防できたものと思われます。食後に見られる重症じんましんでは詳細不明で状況確認ができていない場合でもWDEIAの検査を行なうべきだと痛切に感じました。

2025/1/5

 

 

 

 

アトピー便り125:アトピー治療におけるクリニカルイナーシャ

アトピー患者さんの症状が悪化するケースが段々と増えてきています。季節の変化に伴う皮膚の乾燥、衣類の刺激、入浴時の習慣、ストレス、ハウスダストのアレルギーなど、様々な悪化因子はありますが、湿疹そのものが一番の悪化因子と言われています。湿疹があればかゆみでひっかくことでさらに皮疹は悪化しますので完全に症状を抑え込むことが必要です。症状の軽い患者さんの場合は皮膚症状に応じたリアクティブな治療で問題ありませんが、症状がひどくなりますと集中的に継続して治療する必要があります。症状の強いアトピー患者さんで定期的に通院していただいていながらあまり症状が改善していないケースの多くは治療(外用剤の強さ、使用量)が十分に足りていません。ここで問題となるのはまさに「クリニカルイナーシャ」です。高血圧や糖尿病などの治療でコントロールが不十分な際によく用いられる言葉で、「臨床的惰性」、「臨床的慣性」などと訳されます。アトピー治療においては症状に応じた外用剤の治療が行なわれない,あるいは十分に皮疹がコントロールされていないにもかかわらず治療が強化されない状態を指します。クリニカルイナーシャは医療費や副作用の懸念、時間的制約、薬が増えることへの抵抗感、医師患者間の意思疎通(コミュニケーション)の不足など、医療者側、患者側、医療制度上のさまざま要因によって起こりえます。難治性(ならびに重症)のアトピー性皮膚炎の治療においてもクリニカルイナーシャの克服は重要な課題です。他に主治医がいながら予約がとれない、待ち時間が長いからと不定期に当クリニックに来られる患者さん、仕事でなかなか受診できないということで長期間の受診間隔になっている患者さん、診察終了時間間際に駆け込みで受診される患者さんにおかれましては、先ずは時間的制約を取り除くことが第一歩と考えます。

(蛇足)周辺に混み合う皮膚科がいくつもあるためか、他医を受診していながら諸般の事情で不意に当クリニックに来られる患者さんが後を絶ちません。ほとんどの場合何事もなかったように受診されますが、問診票や過去のカルテの記載内容、お薬手帳の不提出ならびにその時の症状、雰囲気などでそれとなく分かります。皮疹の推移、治療経過、検査所見などを正しくお伝えいただかないときちんと治療できませんが、わざわざ当クリニックを受診していただいていますのでつなぎとして必要最低限の処方(もしくはこちらで行なった以前の処方)だけは機械的に行なうようにしています。中には長期間や大量の処方を希望されたり、処方の内容を指定されたりする患者さんがいらっしゃいますが、原則としてはご要望にはお応えしておりません。尚、(診断・治療方針を含めた)治療は主治医の皮膚科に一本化した方が宜しいので、こちらから詳しくチェックや説明をしたり、検査をしたりすることはありません。たまに勘違い、思い違いがありますので、(間を空けずに定期的に)当クリニックだけを受診しているにもかかわらずきちんと診てもらっていない(と感じる)場合は診察時にご遠慮なくお申し出ください。また、改めて説明を詳しく聞きたい場合、セカンドオピニオンを求めたい場合、こちらを主治医に変えたい場合にもお気軽にその旨をお伝えください。

2024/12/1

 

 

 

アトピー便り124:アトピーの新しい外用剤登場

ここのところ汗もあまりかかず、乾燥も目立たない時候だったためか、アトピーの症状が一旦落ちついていた患者さんで治療を弱めたり、お休みしたりしていて、急激に悪化するケースがちらほら見られるようになってきました。一度悪くなりますと、症状を落ち着かせるのに以前よりも強力な治療をまとまった期間行なう必要がありますので、症状が落ち着いている間も症状にあわせた治療ならびにスキンケアを継続するように心がけてください。
つい先だって12歳以上のアトピーの患者さんで新しい外用剤(ブイタマーⓇクリーム)が使用できるようになりました。既存の外用剤とは異なる作用機序の非ステロイド剤ですが、比較的高価で、臨床的な効果もまだ十分に認知されていませんので、今後どのような展開になっていくのか注目されます。当クリニックでもいろいろな情報を踏まえて今後(現時点では時期未定)採用していく予定です。

2024/11/2


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