◯今回は(3)タクロリムス軟膏は塗った後痒くなるので使いたくない。 を検証します。日本皮膚科学会が作成したアトピー性皮膚炎診療ガイドラインでは、薬物療法としてステロイド外用薬とタクロリムス(商品名プロトピック)軟膏が記載されています。アトピー性皮膚炎の治療においては軽症から重症に至るまで幅広く対応する必要がありますので5種類の強さに分かれるステロイド外用薬が薬物療法の中心となりますが、タクロリムス軟膏の長所はステロイド外用薬にみられる長期連続使用に伴う皮膚萎縮を起こさないという点です。また、顔、首などステロイド外用薬の副作用の現れやすい部位の皮疹の治療には最適です。
◯タクロリムス軟膏のステロイド外用薬に劣る点としては、ステロイド外用薬に比べてストロングとマイルドの強さに匹敵する2種類しかありませんので、ベリーストロング以上の強さのステロイド外用薬のように重症のアトピー性皮膚炎を治すことは困難です。
◯そこで実際の診療で一番問題になる冒頭のタクロリムス軟膏の刺激症状ですが、タクロリムス軟膏の外用は顔、首を中心に行なわれ、成人の約8割、小児の約5割にほてり感やヒリヒリ感、痛みや痒みなどの症状がみられます。患者さんによっては就寝前の外用後眠れないということで使用中止に至るケースも珍しくありません。その場合にステロイド外用薬をだらだらと続けますと副作用の心配がありますし、治療をしないままだと皮疹は悪化し続けますので何とかしてタクロリムス軟膏の外用を続けるようにしたいものです。タクロリムス軟膏の刺激症状は入浴により増すことがあるので、他の外用薬とは分けて入浴後30分以上経ってから外用すると軽減する可能性があります。タクロリムス軟膏の刺激症状は多くの場合には皮疹の軽快に伴って数日以内に軽くなりますので余程強い症状でなければタクロリムス軟膏を適量塗り続けることが大事です。刺激症状のために塗ったり塗らなかったりであったり、外用量を減らしたりしますと皮疹が改善しないので刺激症状だけが残り続けてしまいます。どうしても刺激症状が強すぎて我慢できない場合には数日間ステロイド外用薬を塗っていったん症状を良くしてからタクロリムス軟膏に替えると刺激症状は激減します。タクロリムス軟膏はステロイド外用薬に次ぐアトピー性皮膚炎の治療薬であり、特に顔、首の治療においては第一選択となります。予防的に外用を続けるプロアクティブ療法でも有効です。刺激症状のためにタクロリムス軟膏の外用を中止している患者さんは今一度皮膚科専門医の主治医と相談されてタクロリムス軟膏の外用を再開されることをお勧めします。
2016/1/19