アトピー便り

アトピー便り15:リセットします。

 アトピー便りにつきましてはなかなか患者さんのニーズにお応えできるようなアップトゥーデートなアトピー情報を提供することができず、頻回に更新することができませんでした。過去の内容と重複することも多々あるかとも思いますが、これからは原点に戻って患者さんの立場になってこちらがお伝えてしておきたいことをアトピーに限らず、皮膚のアレルギーを中心に皮膚病に関する情報を繰り返し発信させていただこうと思います。今後ともよろしくお願いします。

 当クリニックはアレルギー科を標榜している関係からアトピー(性皮膚炎)、じんま疹の患者さんが多くを占めますが、初診時の問診表では多くの方が検査を希望されています。これらの皮膚疾患がアレルギーによって起こるものと考えられがちで、アレルギー科イコール検査をするというイメージが患者さんの中では強いためと思われます。
 実際に乳幼児のアトピーでは食物アレルギーの関係することが多く、成人の重症アトピーではたいていの場合ホコリやダニの強いアレルギーが見られます。フルーツを食べた後に口やのどに違和感を覚える症状や、パンやめん類など小麦を食べてから数時間以内に運動をしておこるじんま疹、呼吸困難などの症状はアレルギーによるものです。このようなケースでは当然積極的に検査をして原因をとり除く必要があります。
 乳幼児のアトピーは7~8割が軽症例で、年齢があがるにつれて多くは症状も改善します。仮に食物アレルギーがあったとしても重症例を除いてはあまり食事制限の必要はありません。じんま疹についてもアレルギーの関与する例は全体の数%にすぎず、ほとんどはアレルギーとは関係ありません。
 保険診療におけるアレルギー検査(ここでは血液検査)について触れておきます。症状や病気があって医師が必要と認めた検査は保険が適用されて、一般には実際の費用の3割(後期高齢者は1割)が患者さんの負担となります(松山市は6歳までは無料)。ただし、保険が適用される場合でも1回に行なう検査の数には上限がありますのでご注意ください。よくテレビや雑誌を見て心配だからアレルギー検査をしてくれと言われることがありますが、この場合症状が見られずこちらが必要と認めない場合には保険を適用することはできません。保険を使わずに全額費用をご負担される場合には数に制限なく検査をすることができますが、一緒に保険診療でお薬をもらったり、他の治療を同時に受けたりすることはできませんのでご注意ください。アレルギー検査の費用の詳細につきましては、言づてに別途掲載しておきますのでご参照ください。
 小児のアトピーではアレルギー検査を目的に来院されるケースがとても多いのですが、当クリニックでは初診時に検査をすることはあまりありません。その理由としては、アトピーはアレルギーだけが原因ではなく、きちんと治療をしてスキンケア、生活習慣を整えて良くなる場合には仮にアレルギーがあってもあまり問題にはならないからです。先ずきちんとお薬を塗っているかどうか、スキンケアができているかどうかを確認します。
 乳幼児の重症もしくは難治性のアトピーでは食物アレルギーが関与することが多く、当クリニックでも積極的に検査を行なっています。主な原因としては卵、次いで牛乳が挙げられますが、これらの原因を調べるのに血液検査(もしくはプリックテスト)を行います。ところが、血液検査にしろ、プリックテストにしろ、絶対的なものではなく、あくまで参考材料にすぎないことを知っておいてください。稀ではありますが、陽性であっても食べて大丈夫な場合もありますし、陰性であっても食べると症状の出る場合もあります。また、検査の数値が症状の程度にいつも比例するわけではありません。従って、血液検査を頻回に行う意味はあまりありません。食物アレルギーを確定する検査としては、実際に食物をやめたり、食べたりしたらどうなるかをみる、除去試験、負荷試験 [松山赤十字病院小児科など実施する医療機関は限られています]を行います。当クリニックでも必要時には紹介させていただいております。尚、食物アレルギーの関与するアトピーと純粋な食物アレルギーは異なりますのでご注意ください。
 血液検査にしろ、当クリニックで乳児に行うプリックテストにしろ、子どもさんには痛くてストレスになるということを忘れないでください。必要な時には積極的に検査を行うべきですが、6歳以下で無料だからとか、アレルギーかどうか気になるといった親御さんの都合だけで子どもさんにとっては苦痛なだけの検査を受けさせるのは控えたいものです。
 当クリニックでは原則的には保険診療を中心に行なっております。従ってこちらが必要と認めた場合にだけ検査を行なっています。問診表でアレルギー検査を希望されている方についても同様です。尚、先に述べたとおり全額患者さん費用負担で検査を行うことはできますので、どうしても気になるので検査をしたいという方はご遠慮なくお申し出ください。費用につきましては前述のとおり言づてに別途掲載しておきますのでご参照ください。

2011/9/10


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